図2-1 FBRサイクルの実用化に向けた技術開発の概要
私たちは、高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化に向けて、FaCTプロジェクト及び高速増殖原型炉「もんじゅ」を用いた研究開発等を進めています(図2-1)。これまでにFBRサイクル技術への適用を目指す革新技術の採否可能性を判断し、FaCTプロジェクトの第一段階を終了しました。また、「もんじゅ」については試運転を再開し、炉心確認試験(零出力炉物理試験等)を完了しました。その後、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を受けて国によるエネルギー政策及び原子力政策の見直しが進められていることを踏まえ、2011年度から開始予定であった第二段階へは移行せず、第四世代炉としての高い安全目標を実現するために、安全設計要件の国際的な標準化を目指した検討などを進めています。本章で紹介する各トピックスについても、更なる安全性向上を目指したテーマであり、以下にその概要を示します。
フランス電力(EDF)は、将来のナトリウム冷却高速炉の建設・運転者の立場からJSFRの安全性向上及び物量低減に係る革新技術を検討し、フランスの将来の実用炉に対しても有効な技術であると評価しました(トピックス2-1)。
JSFRでは炉心崩壊事故を想定してもその影響を炉容器内に閉じ込めることを目指しており、基礎実験により内部ダクト付き燃料集合体が炉心崩壊事故の炉容器内格納に有効な手段であることを確認しました(トピックス2-2)。機器配置のコンパクト化のために採用した曲り管は大口径でその中を冷却材が高速で流れるため、流体励起振動で配管が破損しないよう、試験によりエルボ内の流動を明らかにし、配管設計に反映しました(トピックス2-3)。また、配管材料に用いる改良9Cr-1Mo鋼の溶接継手における高温・長時間領域での強度低下について、破損メカニズムに対応した試験データの解析によりクリープ寿命予測式を作成し、設計成立性を確認しました(トピックス2-4)。「もんじゅ」では、原子炉停止後に津波により全交流電源喪失に至った場合でも、冷却材の流路が確保されている限り冷却材の自然循環が成立し、炉心が冷却できることを明らかにしました(トピックス2-5)。
燃料製造の研究開発では、転動造粒,ダイ潤滑成型,焼結時の酸素/金属比の調整に関する試験を通じて、燃料製造プロセスの短縮が可能な簡素化法による燃料製造プロセスの成立性を確認しました(トピックス2-6)。