2-5 電源喪失時でも自然循環で炉心冷却できる

−地震・津波時の「もんじゅ」炉心冷却能力評価−

図2-9 「もんじゅ」プラントの高低差と自然循環の仕組み

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図2-9 「もんじゅ」プラントの高低差と自然循環の仕組み

原子炉施設は海抜21 m以上に設置され、津波の影響を受け難いです。炉心と空気冷却器は約24 mの高低差を設け配置され、循環ポンプ停止後も冷却材の温度差(密度差)により系統内を冷却材が自然に循環します。

 

図2-10 冷却材自然循環による冷却材温度変化(解析結果)

図2-10 冷却材自然循環による冷却材温度変化(解析結果)

3ループの冷却系の冷却材自然循環により約3日間で低温停止(冷却材温度250 ℃以下)に至ります。その後は電源復旧による循環ポンプ運転により低温停止が維持されます。

「もんじゅ」では、地震を検知して炉心内に制御棒が挿入され、原子炉が停止しても、燃料内の核分裂生成物の崩壊熱(1日経過後で定格出力の1%以下)があるため、この熱を確実に除去する必要があります。このため原子炉停止後は、仮に外部電源が失われても非常用ディーゼル発電機を起動し、その交流電源により循環ポンプを運転(定格流量の約10%)し、系統内の冷却材を強制循環させ、蒸気発生器から2次冷却材流路を切り替えた空気冷却器を介して、炉心の崩壊熱は大気へ放散します。しかし、津波の規模によっては、補機冷却海水ポンプから冷却水(海水)が供給されなくなり非常用ディーゼル発電機が停止し、全交流電源喪失に至ることが考えられます。このため、こうした場合でも、循環ポンプに拠らず冷却材の温度差(密度差)によって冷却材が系統内を自然循環し、炉心を冷却できるよう作られています。すなわち、炉心と空気冷却器には約24 mの高低差を設けています。また炉心を冷却する空気冷却器など重要な設備は、海抜21 m以上の高い位置に設置されています(図2-9)。

これらを踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所事故をかんがみ、「もんじゅ」において地震・津波発生後、全交流電源が喪失した場合の冷却材自然循環による炉心冷却能力について、「もんじゅ」自然循環予備試験結果等により解析の妥当性を確認したプラント動特性解析コード(Super-COPD)を用いて改めて詳しく調べました。

原子炉定格出力運転中、地震により原子炉が停止し、13分後に津波により全交流電源が喪失した場合、3ループの冷却系自然循環により炉心は冷却され、約3日後にプラントは低温停止(冷却材温度250 ℃以下)に至ります(図2- 10)。また津波来襲時刻(全交流電源喪失による自然循環開始時刻)が変化した場合、初期原子炉出力、崩壊熱量及び空気冷却器入口空気温度(外気温)が変化した場合でも、3ループの冷却系自然循環により炉心冷却に成功し、万が一1ループの冷却系が使用不能で除熱ができない場合でも、残りの2ループの冷却系自然循環により炉心冷却に成功することが分かりました。

以上から、地震・津波によって全交流電源喪失に至ったとしても、「もんじゅ」では、冷却材の流路が確保されている限り、冷却材の自然循環が成立し、炉心が冷却できることが分かりました。