図1-13 森林の除染試験場所
図1-14 試験場所の除染前後の状態
表1-2 森林の奥行き方向の除染広さに対する森林入口付近の空間線量率(1 m高さ)の推移
現在、東京電力福島第一原子力発電所事故により生じた放射性物質による環境の汚染への対処が喫緊の課題となっています。原子力機構では、今後の自治体,コミュニティーが行う除染活動に必要となる知見・データの蓄積と情報提供を目的として、伊達市及び南相馬市において除染試験を行いました。除染試験では、森林,農地,家屋,道路などの生活環境に存在する様々な構成要素が含まれる区域を対象に、原子力機構が策定した計画に基づいて、容易に実施可能で、実践的な除染方法を用いました。ここでは、様々な構成要素の中で、森林の除染試験の結果について紹介します。
福島県においては森林に隣接する家屋が多いことから、森林除染は、まずそのような家屋に住む方々の被ばく線量を低減することを目的として行うことが重要と考えられます。さらに、この森林除染をより効率的に進めるためには、除染方法の効果、除染対象とすべき森林の奥行深さなどを、データに基づいて明らかにすることが必要と考えられます。
この観点から、森林の除染試験は、まず森林入口から10 mまでの奥行を有する除染対象区域(区画1)において、針葉樹の区域と広葉樹の区域を別々に、除草・落ち葉かき,リター層除去及び地表から4 m高さまでの枝打ち作業を順に実施しました。また、各作業の終了時には、森林入口での空間線量率を測定しました。さらに、この手順を森林入口から奥行30 mまで10 m毎(区画2及び区画3)に実施しました。なお、枝打ちは、森林内部では既になされていたことから、森林入口のみで実施しました(図1- 13,図1- 14)。
その結果、表1-2に示すとおり、リター層の除去が森林入口の空間線量率の低減に最も有効でした。また、区画1の除染を行うことにより、森林入口の空間線量率はほぼ半分に下がりましたが、引き続き実施した区画2及び区画3の除染に伴う更なる低減は見られませんでした。
この結果に基づくと、森林に隣接する家屋に住む方々の被ばく線量低減を目的として森林除染を行う場合、隣接する森林入口から奥行10 mまでの区画を対象として、リター層の除去を行うことが最も効率的だと考えられます。
本研究は、内閣府からの受託研究「福島第一原子力発電所事故に係る福島県除染ガイドライン作成調査業務」の成果の一部です。