図1-11 航空機モニタリング機器
図1-12 日本全域の放射線量マップ
東京電力福島第一原子力発電所(1F )事故以来、環境の放射線モニタリングには、迅速に広域を測定できる方法が求められています。また、その結果は分かりやすいように可視化し公開されることが望まれています。
原子力機構では、事故の影響を把握するため、航空機(ヘリコプター)を用いた放射線のモニタリングを実施しています。航空機によるモニタリングでは、大型のγ線用の検出器(NaI検出器)(図1- 11)をヘリコプターに搭載し、GPSで測定した位置・高度情報とγ線の計数率を同期させたデータを採取します。データは、東日本は3 kmメッシュ(1F近傍は1.8 kmメッシュ)に、西日本・北海道は5 kmメッシュの測線間隔で採取しました。採取したデータは、地上で測定したデータと比較し、高度などの影響を補正して地上1 mでの線量率に換算します。換算した線量率は、同時に測定していたγ線のエネルギースペクトルから自然の放射性核種の影響を差し引き、放射性セシウム(Cs)の沈着量(Bq/m2)に換算できます。今回、日本全域の線量率を測定するにあたり、大量のデータが処理可能なように、測定方法・項目等の統一・最適化を行い、ルーチン化しました。
図1- 12に、線量率のマップを示します。このマップは、場所によって測定日が異なるため、減衰補正を行い2012年5月31日時点の線量率に換算して、同一マップ上に表示しています。マップを見ると、1Fから北西方向に高線量地域があり、その地域に連なるように栃木県,群馬県まで比較的線量の高い地域が見られます。また、茨城県南部地方や宮城県北部にも比較的高線量である地域があることが分かります。これらは、1Fから放出された放射性Csが沈着したことによるものと考えられます。一方、中国地方や九州地方の中部にも周辺より線量率の高い場所が見受けられますが、解析の結果、自然放射線による影響であることが分かりました。
本マップは、文部科学省のホームページに一般公開され、誰でも見ることができます(http://radioactivity.mext.go.jp/ja/contents/6000/5847/view.html)。今後とも、迅速に広範囲の放射線を測定し、可視化する方法について研究を進めてまいります。
本研究は、文部科学省からの受託研究「平成23年度広域環境モニタリングのための航空機を用いた放射性物質拡散状況調査」の成果の一部です。