1-8 実践から得られた除染の手引き

−除染モデル実証事業の成果−

図1-15 ショットブラスト工法による除染作業(大熊町役場周辺)

図1-15 ショットブラスト工法による除染作業(大熊町役場周辺)

直径1 mm程度の鉄球を高速で除染対象に衝突させ、除染対象の表面を薄く切削する除染方法です。原子力施設内で使用されている方法を道路に適用し、大熊町役場周辺での実績では、表面汚染密度を90%以上低減させることができました。

 

図1-16 除染作業の手引き(報告書より抜粋)

拡大図(239KB)

図1-16 除染作業の手引き(報告書より抜粋)

地形,構造,除染対象等ごとに除染方法を解析し、除去物,水処理方法及び除染係数の観点からの評価のほか、施工上の留意点や標準コスト算出などを行いました。

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い、国や自治体等による環境の除染作業が行われつつあります。誰もが経験のないこの作業を、効果的かつ効率的に行うとともに、作業に伴い発生した除去物を適切に管理するには、定量的な実データに基づく情報を集約した手引書が必要です。私たちは、2011年11月から2012年6月にかけて、内閣府の委託事業として、年間の被ばく線量が20 mSvを超える線量率の高い場所を含む警戒区域や計画的避難区域など11市町村での除染モデル実証事業(モデル事業)を実施し、200 haを超える広大なエリアでの種々の除染実証試験と除染効果についての評価,解析等を行い、その結果を除染作業の手引きとなり得る具体的な事例や知見を集約した報告書に取りまとめました。

モデル事業では、地域ごとに宅地,農地,道路,森林などその地形や構造を考慮した上で多様な除染方法を試み、除去物(施工スピード,除去物発生量など)、水処理方法(使用水量,回収率など)及び除染係数の目安(低減率など)を除染に求められる三大要素として推奨する除染技術の選定を行いました(図1- 15,図1- 16)。

除染に先立ち、除染効果の予測評価を行う解析コードを用いることで、面的除染の効果を事前に予測できます。私たちは、「除染効果評価システム(Calculation system for Decontamination Effect:CDE)」という原子力機構が開発し、既に公開されている解析コードを使用しました(トピックス1- 12)。予測した除染作業後の線量率分布は、除染後に行った測定結果と良く一致するものであり、CDEが効率的な作業計画の立案に有用であることを確認しました。

除去物の仮置き場についても、各地の地形を考慮した構造、遮水シート等による除去物の隔離、土嚢等による除去物からの放射線の遮へい、可燃性除去物の適切な間隔での保管などに配慮して設計、施工しました。これらの対策が適切に機能していることを、その後の定期点検時の水中の放射性セシウム濃度(除去物の隔離),線量率(放射線の遮へい),温度(可燃性除去物の適切な保管)等の測定により確認しています。

これらの成果は、2012年3月26日に福島市内で報告会を開催するとともに、資料や報告書などを原子力機構のホームページ(●参考文献)で公開しています。

本研究は、内閣府からの受託研究「福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務」の成果の一部です。