3-2 地層処分における硝酸塩の影響を把握する

−炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの化学的変遷挙動のモデル化−

図3-6 試料と試験溶液を封入したアンプルと気相分析装置のアンプル開封部

図3-6 試料と試験溶液を封入したアンプルと気相分析装置のアンプル開封部

試験片と試験溶液をアンプルに密封して反応させ、ガス状の物質を含めて生成物を測定する方法を示しています。

 

図3-7 炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの化学的変遷過程の概念モデル

図3-7 炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの化学的変遷過程の概念モデル

炭素鋼,硝酸イオン及び水の化学反応と電子のやり取りを示しています。

 

図3-8 反応容器(アンプル)1体当たりの亜硝酸イオン,アンモニア及び水素ガスの量の経時変化

図3-8 反応容器(アンプル)1体当たりの亜硝酸イオン,アンモニア及び水素ガスの量の経時変化

323 K,pH 12.5,NaNO3濃度5.0 mol/dm3成る条件でのモデルによる計算値と測定データを表しています。

低レベル放射性廃棄物には硝酸イオン(NO3)が多量に含まれているものがあります。このNO3は酸化性の化学種であり、金属の腐食反応に伴い、亜硝酸イオン(NO2)やアンモニア(NH3)に還元されます。これらが、放射性物質の溶解度やバリア材への収着性に影響を与えることで、処分施設及びその周辺における放射性物質の移行現象に影響を及ぼす可能性があります。したがって、硝酸塩を含有する放射性廃棄物の地層処分における安全性を評価するためには、その基礎情報として、金属腐食によるNO3の化学形態の変化を評価する必要があります。

そこで、処分施設に多く存在する炭素鋼を対象に、処分施設を構成するセメント中を想定した閉鎖系(図3-6)で炭素鋼とNO3を共存させて、NO3の化学的変遷挙動を検討しました。その結果、pHが12.5から13.5の範囲では、NO2及びNO3を多量に含む場合と含まない場合とを比較すると、前者の方が電気化学的なカソード反応速度が、はるかに大きいにもかかわらず、炭素鋼の腐食速度は、硝酸塩の濃度の影響を受けないことが分かりました。これは、このような条件での腐食反応系がアノード支配型であることを示唆しています。また、炭素鋼の腐食に伴うNO3の還元過程は、NO3→NO2→NH3という逐次反応と考えられ、アノード支配型の腐食反応におけるカソード過程として、NO3及びNO2の還元反応は、水素発生反応と競合します。このため、NO3濃度が高い場合(>1.0 mol/dm3)には、NO3の共存しない場合と比較して、腐食に伴う水素発生速度が非常に小さくなります。

これらの知識に基づき炭素鋼等の廃棄物含有金属と廃棄物に含有されるNO3の化学的相互作用のモデル化を行いました。炭素鋼の腐食に伴うNO3の還元反応は、NO3→NO2→NH3/NH4成る逐次反応とし、これらの反応による還元電流と水の還元電流の和が炭素鋼の腐食によるアノード電流とバランスするとしてモデル化しました(図3-7,図3-8)。今後は処分施設外における微生物反応や鉱物反応による硝酸イオン化学変遷モデルと組み合わせて硝酸塩の影響評価技術を開発していく予定です。

本研究は、経済産業省からの受託研究「硝酸塩処理・処分技術高度化開発(2007,2008,2009,2010)の成果の一部です。