3-6 地下深部における水理地質構造を推定する技術

−研究坑道の掘削に伴う水圧応答を用いた水理地質構造の評価−

図3-18 s-log(t/r2)で整理した水位低下量

拡大図(262KB)

図3-18 s-log(t/r2)で整理した水位低下量

x軸はt/r2の対数で、y軸は各観測区間における水位低下量を示します。
グループ1- Aの水位低下量が小さなグループ,グループ1- Bは明瞭な水位低下量が確認されなかったグループです。また、グループ2- Aは水位低下量が大きく水位低下が継続しているグループ,グループ2- Bは水位低下量が大きいものの収束したグループとしました。

 

図3-19 s-log(t/r2)でのグループ分類結果(断面図,平面図)

拡大図(161KB)

図3-19 s-log(t/r2)でのグループ分類結果(断面図,平面図)


高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるサイト選定や安全評価においては、地下深部における地下水の流れを評価する必要があります。特に、地下水の流れに大きな影響を及ぼす断層などの地質構造(水理地質構造)の分布やその透水性を把握することが重要であることから、それに必要な調査評価技術の整備を目標に岐阜県瑞浪市において超深地層研究所計画を実施しています。瑞浪超深地層研究所(以下、研究所用地)では現在、地下深部において研究坑道の掘削を進めており、また、研究所用地内とその周辺では、地上から掘削したボーリング孔で研究坑道の掘削に伴う周辺の地下水圧の変化を観測しています。

研究坑道の掘削に伴う地下水圧の変化は、周辺の水理地質構造の分布やその透水性に関する情報を含んでいます。そこで、研究坑道の掘削を地下深部の水理特性を評価するための大規模な試験とみなし、地下水圧のデータから水理地質構造分布の推定を試みました。ここでは、地下水圧の変化を水位低下量に換算し、揚水試験における透水係数の算出方法のひとつであるCooper-Jacobの直線勾配法で用いられるs-log(t/r2)プロットで整理しました。ここで、sは水位低下量、tは揚水開始からの時間、rは揚水地点からボーリング孔までの距離です。このプロットでは、観測地点が異なる場所であっても、同じ水理地質構造で観測された水位低下量は、理論上同一の直線上にプロットされます。

図3- 18にs-log(t/r2)プロットで整理した各観測区間の水位低下量を示します。図3- 18から、研究所用地内とその周辺における水位低下量を、プロットのカーブの形状の類似性から四つのグループに分類しました。

次に、図3- 19に各観測孔の位置とグループ分類結果を示します。各グループは空間的に偏在しており、異なるグループの境界には、地上からの調査や坑道内からの調査により透水性が低く地下水の流れを遮断する構造と推定・確認されている、主立坑断層や瑞浪層群中の泥岩層が存在することが分かります。この結果は、坑道の掘削を大規模な揚水試験とみなして周辺の水圧応答を分類することで、広範囲の水理地質構造が評価できることを示しています。