4-4 国際核融合エネルギー研究センター事業の概観

−原型炉設計研究開発調整センター,計算機シミュレーションセンターの取組み−

図4-10 日欧システムコード(日本:TPC,欧州:PROCESS)の比較テスト結果

図4-10 日欧システムコード(日本:TPC,欧州:PROCESS)の比較テスト結果

誘導運転時間を除き良好な一致が得られました(図中の規格化放射損失とは、プラズマからの輻射パワーを100 MWで規格化しています)。

 

図4-11 プラズマ焼結試料の外観とX線回折分析結果

図4-11 プラズマ焼結試料の外観とX線回折分析結果

Be12Tiの含有量が高く高密度の焼結試料を合成できるようになりました。

 

図4-12 ITER定常運転プラズマにおけるアルファ粒子励起TAEモード

図4-12 ITER定常運転プラズマにおけるアルファ粒子励起TAEモード

アルファ粒子により励起されたTAEモードの磁場揺動はアルファ粒子の閉じ込めを大きく劣化させないことが分かりました。

幅広いアプローチ活動のひとつである国際核融合エネルギー研究センター事業(IFERC事業)では、ITER計画及び核融合炉の早期実現に貢献することを使命として、(1)原型炉設計研究開発調整センター(2)計算機シミュレーションセンター(3)ITER遠隔実験センターの三つの副事業を我が国と欧州の共同として2007年からの10年計画で青森県六ヶ所村において推進しています。原型炉R&D棟及び計算機の運用開始を受け、2012年は、準備フェーズから本格的な研究フェーズへの展開の年と考えられています。

原型炉設計研究開発調整センターにおける原型炉設計活動においては、日欧の実施機関及び事業チームから構成される統合事業チームの下で共同活動が始まり、ダイバータ,炉内構成材,トカマク運転モード及び図4- 10に示される日欧双方のシステムコードの比較テスト等が実施されました。システムコードの比較テストでは、誘導運転時間を除き良好な一致が得られ、相違点に関わる物理モデルの検討が続けられています。

原型炉設計研究開発調整センターにおける原型炉研究開発活動においては、日欧の共通認識に基づいたブランケット開発に関連して(1)SiC/SiC複合材料(2)トリチウム工学(3)低放射化フェライト鋼(4)先進中性子増倍材料(5)先進トリチウム増殖材料の五つの研究分野において研究開発が着実に進展しており、図4- 11に示される先進中性子増倍材料としてのベリリウム金属間化合物(Be12Ti)がプラズマ焼結法で合成できるようになったことが特筆すべき成果として上げられます。なお、試料の未反応Be等の含有量を低減させるため、合成条件の最適化の研究を進めています。また、様々なブランケット分野の研究者が参加できるRI許認可施設としての原型炉R&D棟の完成により、同分野における大きな相乗効果が期待できると考えられます。

計算機シミュレーションセンターにおいては、1.52PF(Linpackテストでは1.237PF)のスーパーコンピュータが1月から稼働中で、3月中旬まで先駆的な磁場閉じ込めシミュレーション領域を開拓するための灯台プロジェクトが実施されました。その一例が、図4- 12に示されるITER定常運転プラズマでの核反応生成アルファ粒子の閉じ込めシミュレーションです。アルファ粒子が励起した不安定性はアルファ粒子の閉じ込めを大きく劣化させないことが分かりました。

以上のように本格的な研究が今後も着実に進展するものと期待されています。