4-5 重陽子加速施設の安全確保のために

−IFMIF用のプロトタイプ加速器の安全系機器開発−

図4-13 IFMIF/EVEDA加速器の安全系機器の構成

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図4-13 IFMIF/EVEDA加速器の安全系機器の構成

(1)PPS:系統を二重化(a,b)し、監視対象機器とハードワイヤで接続することで高い信頼性を確保します。また放射線モニタリングシステムと連携し、放射線の漏えいによる被ばくをなくします。
(2)MPS:機器の異常をビーム遮断機器に高速伝送し、機器をビームによる熱損傷から守ります。

国際核融合材料照射施設International Fusion Materials Irradiation Facility:IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(Engineering Validation and Engineering Design Activities:EVEDA)におけるプロトタイプ加速器(IFMIF/EVEDA加速器)は、重陽子を9 MeV/125 mAまで連続で加速します。このため放射線遮へいと機器の放射化量の軽減が安全上の必須課題です。

私たちは、IFMIF/EVEDA加速器の施設安全を確保するため、図4- 13に示すように二つの独立したシステム(1)信頼性の高い人員保護系(Personnel Protection System:PPS)及び(2)異常発生時に高速でビームを遮断させる機器保護系(Machine Protection System:MPS)を開発しています。

PPSでは、市販ベースの機器を用いて人員保護を実現することを主眼にシステム検討・設計を行いました。この結果、安全上重要な箇所においては、各個人の入退室管理キー,扉インターロック等として保守的な機械方式のより信頼性の高い機器を設置し、信号経路を二重化するとともに、電気信号処理部に(Programmable Logic Controller:PLC)を採用した統合的なシステムを構築しました。このPLCのロジックシーケンスをこれまでの経験を生かして独自に設計・製作することで、本加速器に求められる多様な運転試験条件に柔軟かつ迅速に対応できるシステムを構築しました。また9 MeV重陽子による実験データを用いた遮へい解析により性能評価した放射線モニタリングシステムとPPSを連携させ、中央制御システムによる放射線安全管理も確立しました。

MPSでは、信号雑音による誤動作を排除し、加速器構成機器からの異常信号のみを高速で伝送してビームを遮断する機能が求められます。このためFPGA(Field-Programmable Gate Array)とMOS型ICによる高速信号処理機能を採用したMPSユニットを用いたMPSを構築して、耐信号雑音性能を満たすとともに、要求性能の1/2である5 μsの高速異常信号伝送に成功しました。これによりビームによる熱損傷を防ぐMPSの実現に見通しを得ることができました。