13-2 私たちの身の回りの放射性セシウム

−東海村における東京電力福島第一原子力発電所事故後2年間の放射線状況の推移−

図13-3 1F事故前から2013年3月までの約2年間に東海村で観測された空間線量率等の状況

拡大図(260KB)

図13-3 1F事故前から2013年3月までの約2年間に東海村で観測された空間線量率等の状況


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故により放出された放射性物質によって、2011年3月15日以降、1Fより約115km離れた核燃料サイクル工学研究所内外(茨城県東海村)でも線量率等の上昇が観測されました(JAEA-Review 2011-035にて中間報告済 事故直後の空間線量率1時間平均値を図13-3(a)に示す)。事故発生から約2年が経過した現在の放射線状況について整理しました。

空間線量率(1ヶ月平均値)を図13-3 (b)に示します(代表として所内MP7,所外ST2(東海村舟石川)のみ)。周辺環境(樹木等)の違いにより、測定した線量率には2〜3倍の差があります。地表に沈着した134Csと137Csは半減期がそれぞれ約2年、約30年と長いため、現在の線量率の多くを与えています。短半減期核種の影響がほぼなくなった2011年5月から2013年3月の間における事故寄与分の減少率は、市街地のST2で約63%、近傍に松林があるMP7で約59%でした。放射性壊変による理論上の減少率(134/137比が当初1と仮定する場合22ヶ月で約35%)に加えて、25%程度は他の場所へ移動したか、埋没して遮へいされたことを示唆しています。

空気浮遊じん中137Cs濃度 (1ヶ月平均値) についても減少傾向ですが、現在では研究所内よりも所外の方が若干高めの傾向にあります (図13-3(c))。最近の空気浮遊じん中137Csの起源は、現在の1Fからのものではなく、2年前に137Csが沈着した土壌です。風による巻き上げにより土壌微粒子と共に運ばれた137Csが空気中に存在するため、林に囲まれた研究所内よりも、遮るもの(樹木等) の少ない所外で比較的高めの濃度が観測されたと考えられます。

食物中137Cs濃度を図13-3(d)に示します。事故直後については漁船が操業できなかったこともあり、海産物データは2011年5月からですが、134Cs と137Csの合計での摂取基準値である100 Bq/kg生 (2012年3月末までは暫定規制値500 Bq/kg生) の半分未満で推移しています。おおむね減少傾向ですが、底生魚は海底土からの影響を受けるためか、減少傾向は顕著ではありません。葉菜は海産物よりもCsの移行は少なく、1 Bq/kg生未満で推移しています。