1-16 ガンマ線を測定して溶融燃料中の核物質を計量

−随伴FPガンマ線測定による核物質量測定技術の開発−

図1-35 γ線測定による核物質量測定フロー

図1-35 γ線測定による核物質量測定フロー

燃料デブリを収納した缶の外側からγ線スペクトルを測定して求めたFP重量と燃焼度計算から求めた核物質重量との比から核物質量を間接的に求めます。

 

図1-36 154Eu量とPu量との相関(1F2号機の例)

図1-36 154Eu量とPu量との相関(1F2号機の例)

154EuとPuの生成比はほぼ燃焼度に依存します。

 

図1-37 燃料デブリの大きさと漏えいγ線強度

拡大図(437KB)

図1-37 燃料デブリの大きさと漏えいγ線強度

高エネルギーγ線は、低エネルギーのものに比べ漏えいしやすいことが分かります。それでも大きな燃料デブリ内では漏えいされにくいため、全発生量を求めるために遮へい補正が必要です。

UやPuが、平和利用目的以外に用いられていないことを担保し、国内・国際社会に対して示していくことは、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故においても求められます。私たちは、溶融した炉心燃料等(燃料デブリ)を炉心から取り出す際に、収納容器の外側からγ線スペクトルを測定することにより、含まれるU, Puを定量する方法の適用性評価を行っています。

UやPu自身もγ線を放出しますが、核分裂生成物(FP)に比べエネルギー強度が弱く、燃料デブリから直接測定することは困難です。そこで、過酷事故の燃料溶融過程でも揮発性が小さく燃料デブリ内でU, Puと随伴し、高エネルギーのγ線を放出するFP核種に着目しました。セリウム(Ce)やユーロピウム(Eu)は、低揮発性を示す傾向が知られ、144Ceや154Euは1 MeVを超える高エネルギーのγ線を放出します。実際にスリーマイル島原発事故時において、燃料デブリから放出される144Ceのγ線測定により、U, Pu量の推定が行われた実績があります。

FPのγ線スペクトル測定によるU, Pu量の測定フローを図1-35に示します。このように燃焼度計算によって求めた1F事故時のFPとU, Pu重量との比から、間接的にU, Pu重量を求めるため、種々のパラメータの変動によるFPとU, Pu重量の影響を評価しました。例えば、図1-36に示すように154EuとPuの生成比は照射位置,水のボイド率によらず、ほぼ燃焼度に依存することを確認しました。

燃料デブリからのγ線を測定するにあたって、燃料デブリの自己遮へい、収納缶を含めた測定対象物のジオメトリーなどの影響を評価する必要があります。これまで、単純な球形モデルを使用し、燃料デブリの大きさ,組成,空隙率,密度,均質/非均質などをパラメータとした基本的な解析を行っています。500 keV未満の低エネルギーのγ線は、燃料デブリの大きさ、組成に大きく影響されますが、1 MeVを超える高エネルギーのγ線は、それらの影響は比較的小さいことが予想されます。図1-37は、燃料デブリの大きさによる漏えいγ線の減衰率を示しています。燃料デブリの直径が2.5 cm,10 cmでそれぞれ高エネルギーのγ線を放出する154Euの場合でも、20%,50%程度の減衰が見られます。これら自己遮へいによる減衰を補正する必要がありますが、例えば、154Euから出る異なるエネルギーの特性γ線強度測定の差から補正する方法などを検討しています。

今後、収納缶を模擬したモデルによる解析、システム設計のための解析などを行い、本手法の適用性評価を継続するとともに核物質の計量管理に向けた精度向上のための開発を行っていきます。