4-2 ITERダイバータプロトタイプの製作

−実機ダイバータ製作に向けた最初のステップを開始−

図4-4 ITERダイバータの構造 (カセット構造)

図4-4 ITERダイバータの構造 (カセット構造)

ITERダイバータは、外側ターゲット,内側ターゲット及びドームをカセットボディと呼ばれる筐体に設置したカセット構造となっており、54個のカセットでダイバータを構成しています。

 

図4-5 プロトタイプ用プラズマ対向ユニット1号機の外観と加熱試験後の表面

図4-5 プロトタイプ用プラズマ対向ユニット1号機の外観と加熱試験後の表面

(a)プラズマ対向ユニット4本を設置したテストフレームです。
(b)加熱試験後のタングステン製表面保護材の様子です (再結晶が進み白く変色していますが、き裂や除熱性能の劣化は確認されませんでした)。

原子力機構はITER計画に係る日本国内機関(JADA)として種々の機器の製作を実施しています。ITERのダイバータに関しては、ITER参加7極のうち、欧州,ロシア,日本の3極が機器製作を担当します。図4-4に示すように、JADAはダイバータを構成する機器のうち、外側ターゲットと呼ばれる高熱負荷機器の製作を分担しています。

ダイバータは、プラズマから磁力線に沿って入射する不純物イオンをガス化して排気する役割をもっていますが、その際に、 機器の表面を構成するプラズマ対向ユニットと呼ばれる冷却壁に高い熱負荷を受けます。このため、ITERダイバータでは外側及び内側ターゲットの最も高い熱負荷を受ける部分には炭素繊維複合材を、その他の部分にはタングステンを表面保護材料として使用します。これらの表面材料は、銅合金(クロムジルコニウム銅)製の冷却管に冶金的に接合され、高い除熱性能を発揮します。これらの材料同士の接合には、ダイバータ製作に参加する3極独自の技術が使用され、JADAでは主として「ロウ付け」と呼ばれる接合法を採用しています。ITER計画では、接合方法を含む製作手法に関する技術的能力を確認する目的で、参加極には、ITERに実際に使用するダイバータと同等のプロトタイプをまず製作し、実際に加熱試験を実施して、その耐久性を確認することが義務付けられています。

JADAでは、ダイバータ外側ターゲット製作の最初のステップとして、図4-5に示すプロトタイプ用のプラズマ対向ユニット1号機を製作し、ロシアの高熱負荷試験装置に持ち込んで加熱試験を実施しました。このプラズマ対向ユニットの製作にあたっては、事前にロウ付け接合部や冷却管溶接部の強度試験,非破壊検査等の技術確証試験を実施し、また、プラズマ対向ユニット製作中にもITER機構によるロウ付け接合工程の検認を受けて実施しました。この加熱試験の結果、プラズマ対向ユニット1号機は、特にタングステン部分においてダイバータ外側ターゲットに入射する最大熱負荷20 MW/m2、1000回の繰り返し加熱に対して亀裂の発生や除熱性能の劣化といった損傷もなく耐久性を発揮しました。

2013年秋にはプラズマ対向ユニット2号機の加熱試験が予定されており、その後、実機用ダイバータ外側ターゲットの製作を開始する予定です。