4-4 核融合炉設計用核データの精度を調べる

−核融合炉の設計の精度向上を目指して−

図4-8 鉄体系実験配置概略図(垂直断面図)

図4-8 鉄体系実験配置概略図(垂直断面図)

直径100 cm,厚さ95 cmの円筒形の鉄体系内で中性子,γ線に関するデータを測定しました。

 

図4-9 鉄体系の31 cmの深さでの中性子エネルギースペクトル

図4-9 鉄体系の31 cmの深さでの中性子エネルギースペクトル

実験値が●で、我が国の核データライブラリJENDLを用いた計算値が線,線で表示されています。

将来のエネルギー源を目指して核融合炉の実用化に向けた研究が着実に進んでいます。核融合炉では重水素と三重水素を真空中で高温プラズマ状態にして核反応を起こさせ、発生する14 MeVの中性子と周りを囲んでいる物質との核反応を利用して、熱エネルギーを取り出したり、燃料として使う三重水素を生産したりします。また、中性子及び核反応で生じるγ線が施設外に漏れないように、物質との核反応を利用して遮へいします。

このように核融合炉で発生する14 MeV中性子は、周りにあるすべての物質と種々の核反応を起こします。核融合炉の設計では、これらの核反応をすべて考慮して、エネルギー取り出し、三重水素の生産,遮へい等の計算を行います。このとき使われるのが、核反応の種類,エネルギーごとに核反応の起こりやすさ (核反応断面積) 等のデータ (核データ) をまとめた核データライブラリと放射線輸送計算コードです。放射線輸送計算コードの代表的なものが、モンテカルロ法を用いたMCNPコードで、計算に伴う近似が少ないため核融合の分野で広く使われています。一方、核データライブラリは、日本のJENDL,米国のENDF/B,欧州のJEFF等があり、また、国際原子力機関 (IAEA) から核融合炉設計のために各国の核データライブラリの中から最も良いと判断したデータをまとめたFENDLも提供されています。核データライブラリは、計算の精度を決める重要なデータベースで、その精度を実験で検証し、精度を向上させることが求められています。

原子力機構原子力科学研究所にある核融合中性子源施設(FNS)では、加速器を用いて核融合炉で発生する中性子と同じ中性子を作り出すことができます。この中性子を種々の実験体系に入射し(図4-8)、実験体系内の中性子,γ線に関するデータを測定します。設計と同じ手法で実験を解析し、実験値と計算値を比較して、その結果を我が国の核データライブラリJENDLの改良に活かし、核融合炉の設計の精度向上に貢献しています。その一例として、鉄に関する実験の結果を図4-9に示します。0.01 MeV以下の中性子束を詳細に見ますと、旧版のJENDL-3.3を用いた計算値は実験値と比べ系統的に約30%大きくなっていますが、最新版のJENDL-4.0(本研究を基に57Feの断面積の一部が大幅に修正されました)を用いた計算値では、実験値との差を約15%まで低減できました。