図1-36 燃料デブリ取出し後から処分に至る全体シナリオ案
表1-2 処置シナリオ各案の特徴
東京電力福島第一原子力発電所(1F)からの燃料デブリの取出し作業は、2020年頃から開始される計画です。燃料デブリの取出し後の処置(処理・処分方法)については、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」状況を達成した2011年12月から、20〜25年後に決定することとされており、その決定に至るプロセスは議論されていません。したがって、燃料デブリ取出し開始時までには、デブリの処置の選択・決定に係る一定の議論が必要になるものと想定し、それまでに各シナリオの比較評価に用いる情報や比較評価の進め方を決める必要があります。本検討では、今後のシナリオの比較評価に備えて、想定される各シナリオについて、特徴,技術課題を抽出,整理しました。
デブリ取出しから処分に至る過程で、想定される複数のシナリオ案を図1-36に示します。このうち、処置シナリオは、最終処分に向けた安定な廃棄体を製造するための前処理の位置づけとなります。
デブリ処置方式は以下の各方針に基づいて選出しました(表1-2)。
(1)具体的な処置方策が決定されるまで保管
(2) 簡素な処置を前提としU/Puを回収せずデブリをそのまま最終処分
(3) 簡素な処置を前提としU/Puを回収せずデブリを安定化処理して最終処分
(4) U/Puを回収し極力現行の処分体系の中で廃棄物を最終処分
処置シナリオ各案における要素技術が実際に機能することを前提に、経済性,廃棄物発生量,技術的課題について整理した結果、先送りであり最終的な解決にはならないが、仮に50年程度の保管とすると、長期保管が最も安価で、次いで直接処分の順になり、安定化,湿式,乾式処理は高コストとなります。
廃棄物発生量は、直接処分,長期保管が最小となり、安定化,湿式,乾式処理は二次廃棄物が増加します。
技術的課題が相対的に最も少ないシナリオは長期保管、次いで、安定化,湿式処理です。直接処分は国内では新規の廃棄物形態であり、処分に関する課題が生じます。乾式処理は技術的課題が最も多い案です。
総合すると、技術課題は有するものの、経済性,廃棄物発生量の面で有利なシナリオは長期保管及び直接処分と推定されます。一方、安定化処理,湿式処理,乾式処理は経済性,廃棄物発生量の面で不利と推定されます。
本研究は、経済産業省からの受託事業「平成25年度発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備事業(燃料デブリ性状把握・処置技術の開発)」の成果の一部です。