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1 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

「環境汚染への対処」及び「廃止措置に向けた取組み」

図1-1 福島復興に向けて環境汚染への対処として私たちが取り組んでいる主な活動
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図1-1 福島復興に向けて環境汚染への対処として私たちが取り組んでいる主な活動

(原子力機構福島研究開発部門のホームページhttps://fukushima.jaea.go.jpより)

 

図1-2 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の廃止措置に向けて私たちが取り組んでいる主な活動
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図1-2 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の廃止措置に向けて私たちが取り組んでいる主な活動

(a)1F4号機から取り出した未照射燃料集合体部材の表面観察(b)圧力容器下部に溶融燃料が堆積した場合の解析結果の例(c)1F4号機周辺からのがれきの採取と分析作業の様子(d)遠隔操作機器・装置実証施設(モックアップ試験施設)のイメージ

環境汚染への対処

2011年3月11日の東日本大震災発生以降、私たちは災害対策基本法の指定公共機関として放射線測定(モニタリング)など様々な形で対応してきました。現在も福島復興に向けて、私たちは主に次の活動を展開しています(図1-1)。

 

環境モニタリング

東京電力株式会社福島第一原子力発電所(1F)事故によって拡散した放射性物質による汚染状況や空間線量率を正確に把握するために、1F事故前後の海水中の放射性ヨウ素の変動について調査(トピックス1-1)を行いました。また、1F事故後初期の航空機モニタリングデータから放射性ヨウ素の分布(トピックス1-2)を作成し、初期の放射性物質の拡散状況の推定に寄与しています。また、ため池の放射能分布を可視化する技術の開発(トピックス1-3)、放射性セシウムの土壌中の分布の調査(トピックス1-4)を行っています。さらに、モニタリングデータの公開(トピックス1-5)及び福島復興支援に関する事業成果情報発信サイトにおいて路線バスによる福島県の空間線量率測定データ等の公開を行っています。

 

環境回復に向けた取組み

放射性物質に汚染された環境を修復するために除染を迅速に行うことが重要です。除染について私たちは、内閣府からの委託を受け、除染モデル実証事業を行い、この事業で得られた技術情報を提供するポータルサイト「除染技術情報なび」を公開しています。また、環境中の放射性セシウムの分布等の長期的変化の把握を目的として福島長期環境動態研究プロジェクトを進めています。ダム湖での放射性セシウムの挙動解析(トピックス1-6)、粘土鉱物へのセシウムの吸着機構(トピックス1-7)及び放射性セシウムの植物内の挙動(トピックス1-8)を解明するための研究なども行っています。さらに、測定技術の開発として、水溶液中の放射性セシウム濃度を簡便に測定する手法の開発(トピックス1-9)も行っています。これらの研究を踏まえ、今後も環境回復のための除染の最適化や効率化を図る研究を継続します。

 

除染に関する知識の普及

除染に関する知識の普及や活用のために、自治体へ専門家を派遣して、除染技術相談・指導や現地調査,住民説明会支援を実施しています。また、除染の手引きの作成、ワンストップ窓口による相談・助言及び除染活動支援システムRESETの開発による自治体の除染計画作成の支援なども行っています。

 

コミュニケーション活動

放射線について科学的な理解を深めるために「放射線に関するご質問に答える会」を福島県内にある保育園,幼稚園,小中学校の保護者,教職員等を対象に実施しています。2014年3月末までに232団体、約18750名の方に実施しました。

 

住民の内部被ばく検査と線量評価

福島県の住民の方々を対象に、東海研究開発センターのホールボディカウンタ(WBC)及び移動式WBC車を用いた内部被ばく検査を実施しました。2014年3月末までに、61796名(子供45558名,大人16238名)を対象に測定しました。また、様々な建物内の線量低減を評価するための研究(トピックス1-10)も実施しました。

 

廃止措置に向けた取組み

私たちは事故発生当初より、政府や東京電力株式会社に対する助言を行うとともに、1Fの廃止措置に向け炉内で溶融固化した燃料(燃料デブリ)の取出し準備や放射性廃棄物の処理・処分等に関する研究開発を実施しています(図1-2)。

 

プール燃料及び燃料デブリ取出し準備

1F事故では使用済燃料プールには冷却のために海水が注入され、燃料集合体やプールの構成材料の腐食が懸念されるとともに、爆発によりコンクリート片が落下したことから、一部の燃料集合体が破損している可能性があります。私たちは、このような燃料集合体の欠陥等を検知する技術開発(トピックス1-11)を行っています。

1Fの原子炉内に残されている燃料デブリの取り出しに向け、 その位置や状況を事前に調査する技術の開発(トピックス1-12)や、切断,破砕して取り出す技術の開発(トピックス1-13)を実施しています。また、燃料デブリの取出しを終了するまでの間、原子炉容器を維持する必要がありますが、原子炉容器にも冷却のため海水が事故時に注入されており、構造材料の腐食が懸念されることから、この影響の評価に関する試験(トピックス1-14)を実施しています。

燃料デブリの取出し,保管,処理・処分を安全に行うため、燃料デブリとはどのようなものかを事前に把握することが重要です。このため、事故進展解析結果と熱化学平衡計算による燃料デブリの化学形の推定(トピックス1-15)、ウラン,ジルコニウム及び制御棒材料等により模擬デブリを作製し、その硬さなどの特性を調べる研究(トピックス1-16)を実施しています。また、燃料デブリを取り出したあと、保管や処分などをどのようにすべきかの検討(トピックス1-17)を実施しています。

 

炉心溶融進展解析及び事故原因の究明

原子炉が停止した後にも、核分裂により発生した核分裂生成物などが崩壊して熱が発生するため、冷却を継続する必要がありますが、津波による電源喪失に伴い冷却機能が失われ、原子炉内の燃料が溶融(炉心溶融)しました。この炉心溶融がどのように進展したのかを詳細に把握するため、事故進展解析コード等による解析や、評価精度の向上に必要な模擬実験等を実施しています。

 

放射性廃棄物の処理・処分

津波の到来や地下水の建屋内への流入により、大量の汚染水が発生し、敷地内の貯槽に保管されています。私たちは、事故時にこの汚染水に含まれていたヨウ素の大気への放出に関する研究(トピックス1-18)や、汚染水に含まれる測定が困難な放射性核種の分析方法(トピックス1-19)を開発しています。

汚染水からセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を取り除くために、様々な処理装置が設置されており、これらの処理装置から発生する二次廃棄物を含めた放射性廃棄物の保管,処理・処分の技術開発(トピックス1-20)を実施しています。

また、1Fの敷地内からがれきや伐採木等の試料を採取し、これらに含まれる放射能の分析(トピックス1-21)を実施しています。

 

研究開発拠点整備

1F廃止措置の推進に必要な遠隔操作機器や放射性物質の分析・研究等に関する技術基盤を確立するため、福島県内に研究開発拠点の整備を進めています。このうち、遠隔操作機器・装置実証施設(モックアップ試験施設)については、2014年8月に建設を開始しました。