1-18 原子炉事故時に放出される放射性物質の性状を予測する

−核分裂生成物の化学挙動に与えるBWR制御材ホウ素の影響評価−

図1-41 Bの放出割合予測とセシウム及びヨウ素の化学形への影響
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図1-41 Bの放出割合予測とセシウム及びヨウ素の化学形への影響

放出されたホウ素(B)とヨウ化セシウムが反応することによりメタホウ酸セシウムが生成され、余剰となったヨウ素がガス状/揮発性化合物を形成します。水蒸気が欠乏する雰囲気においては、BWR制御ブレードの溶融・崩落時にBとステンレス鋼からなる安定な化合物が生成され、Bの放出が抑制されることにより、ガス状/高揮発性ヨウ素の生成が抑制される可能性があることを示しました。

 

図1-42 FP化学挙動解明のための研究の進め方
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図1-42 FP化学挙動解明のための研究の進め方

シビアアクシデント(SA)時における核分裂生成物(FP)の燃料からの放出や炉内の移行を再現する実験やFP化学挙動の基礎研究を行い、FPの化学反応に関するデータを取得します。得られたデータに対する化学反応速度を考慮した解析によりFP化学挙動を評価してデータベース化し、モデルの高度化に反映します。

 


東京電力福島第一原子力発電所廃止措置の技術開発や軽水炉のシビアアクシデント(SA)時の安全性向上への貢献を目指して、SA時の核分裂生成物(FP)の燃料からの放出や炉内の移行挙動の評価手法高度化のための研究を行っています。SA時に燃料温度の上昇によりFPは燃料から放出され、圧力容器や1次冷却系配管の破損部を通じて格納容器に移行し、環境に放出されます。この放出移行挙動はFPの化学的変化や制御材等との相互作用、すなわち化学挙動に支配されることから、本研究では、FP化学挙動を解明することを目的としました。

FP放出移行挙動に関しては、これまでにも多くの知見が得られてきているものの、例えば、環境に放出されやすいガス状ヨウ素の生成割合が沸騰水型原子炉(BWR)に特有の炭化ホウ素(B4C)制御材存在下で変化する可能性があること等、未解明の挙動も多く残されています。このため、本研究では、BWRのSAにおいて想定される制御ブレードの溶融・崩落や冷却水減圧沸騰ロスによる水蒸気欠乏雰囲気に着目して、これらがFPの化学挙動に与える影響を評価しています。これまでに、BWR制御ブレードの溶融・崩落時に形成すると考えられるB4Cとステンレス鋼の反応物からのホウ素(B)放出割合を計算により評価しました(図1-41)。評価の結果、水蒸気欠乏雰囲気においては熱力学的に安定なホウ化鉄化合物が形成され、B放出割合が大きく低下する可能性があること、また、これによりガス状/高揮発性ヨウ素の生成量が約30%低下し、FPの化学挙動に有意な影響を与える可能性があることが分かりました。

今後は、B放出割合に関する実験データを取得し、計算結果の検証を実施する予定です。また、SA時のFP放出移行挙動を再現する実験装置を製作して実験を行うとともに、FPやBの放出挙動等、各過程におけるFP化学挙動の基礎研究を行い、FPの化学反応に関する実験データや知見を整備していきます。さらに、取得したデータに対しては、化学反応速度論を考慮した解析を行うことにより、FP放出移行に関する化学挙動データベースの構築と化学モデルの高度化を進めていく予定です(図1-42)。