1-5 海底土中放射性核種の濃度を探る

−茨城県周辺海域の海底土中放射性核種の詳細分布調査−

図1-12 茨城県周辺海域における海底土中<sup>137</sup>Cs濃度の経時変化
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図1-12 茨城県周辺海域における海底土中137Cs濃度の経時変化

茨城県北茨城市沖から大洗町沖の南北約50 q,沖合約20 qの範囲内51地点で2012年から3年間継続して海底土を採取しました。(a)2012年,(b)2013年,(c)2014年の各地点における海底土中137Cs濃度を円の大きさで表しました。これにより、137Cs濃度の分布とその時間変化を知ることができます。

 

図1-13 海底土中<sup>137</sup>Cs濃度の経時変化

図1-13 海底土中137Cs濃度の経時変化

2012年の137Cs濃度を1として、2013年及び2014年の各濃度変化を示しました。茨城県周辺海域の全地点と、それらを茨城県沿岸域及び久慈川河口域に分け、それぞれの平均値で示しました。

 

図1-14 海底土中<sup>137</sup>Cs濃度と<sup>90</sup>Sr濃度の相関性

図1-14 海底土中137Cs濃度と90Sr濃度の相関性

2012年と2013年に採取した海底土の中で137Cs濃度が高い海底土について90Sr濃度の調査を行い、それらの相関性を調べました。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故により、様々な放射性物質が環境へ放出されました。私たちは、1F事故前から継続して、茨城県沿岸での海底土,海水,海産生物等に含まれる放射能調査を行っており、これらの調査結果で、1F事故の影響を確認しています。このため、1F事故による海洋への影響を詳細に把握することを目的に、茨城県周辺海域で51地点の海底土を採取し、乾燥した後、それらに含まれる放射性核種(セシウム-134(134Cs),セシウム-137(137Cs),ストロンチウム-90(90Sr),プルトニウム(238Pu,239,240Pu))濃度を調査しました。

私たちは、2012年5〜7月,2013年6〜7月及び2014年5〜7月にかけて3年間同じ地点で海底土を採取し、まず134Cs及び137Cs濃度を定量しました。次に137Cs濃度の高い地点を中心に90Sr及びPuを分析しました。

137Cs濃度の3年間の濃度変化を図1-12に示します。時間が経つにつれて全体的に137Cs濃度は減少しました。137Csの最大濃度地点の海底土では、2012年には1F事故前の濃度(約1 Bq/kg)の約百倍でしたが、2013年及び2014年では数十倍にまで減少しました。中には、2014年に137Cs濃度が1F事故以前の濃度範囲にまで減少した地点もありました。また、全地点とそれらを茨城県沿岸域(30地点)と久慈川河口域(21地点)に分け、137Cs濃度の3年間の減少の推移を調べたところ、違いが見られました(図1-13)。これは、地形や海底土の砂質等が影響していると考えています。

海底土中の90Sr濃度は、2012年と2013年でともにND(検出下限値未満)〜0.26 Bq/kgでした。また、137Cs濃度と90Sr濃度との相関性は本研究結果からは確認できませんでした(図1-14)。このため、茨城県周辺海域の海底土において、90Sr濃度の1F事故による影響は、134Cs及び137Cs濃度に比べて小さいと推測されました。また、Puは、その濃度がとても低く、本研究では1F事故の影響は認められませんでした。

今後も引き続き同海域におけるモニタリングを実施して、1F事故の影響を調査していく予定です。