図1-15 除染活動支援システム(RESET)
図1-16 RESETによる予測と除染結果の比較
東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性物質に汚染された環境を回復するため、空間線量率の高い除染特別地域11市町村と年間の追加被ばく線量が1 mSvを超える汚染状況重点調査地域97市町村では精力的な除染が進められています。原子力機構は、2011年6月に福島市内に拠点を構え、環境省や自治体に対して除染に関する技術的な支援を行っています。
除染活動支援システム(RESET)(図1-15)は、国や自治体が策定する除染計画の立案や効率的・効果的な除染の実施を支援することを目的に開発したシステムです。RESETは、クラウドコンピュータ上に構築されているため、WEBブラウザを使ってインターネットに接続できる環境があれば、PCの種類や性能によらず、迅速かつ精度の高い予測計算ができます。また、RESETは、原子力規制委員会が公開している航空機モニタリングや走行サーベイ等のモニタリング情報に加え、国土地理院の電子地形データや土地利用データ等を有しており、これらを活用することによりデータの入力作業が容易に行えます。除染前に測定された1 m高さの空間線量率をRESETに入力すると、RESETに組み込まれた広域環境放射能除染効果予測システム(ANSWER-DE)の三次元地形の効果を考慮したシミュレーション解析により、除染対象の表面汚染密度分布と除染後の空間線量率を精度良く予測することができます。
一例として、福島県のキャンプ場で実施された除染のシミュレーション結果を紹介します。図1-16は(a)除染前に実測した空間線量率マップ,(b)RESETによる予測,(c)除染後に実測した空間線量率マップを比較したものです。このように除染の効果が分かりやすく可視化できるため、効果的な除染方法や除染範囲の検討のほか、住民への理解活動等にも活用できます。
RESETは現在、環境省の福島環境再生事務所,福島県の除染対策課及び避難地域復興課,福島県内の除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の12市町村で利用されているほか、原子力機構が国や自治体等の依頼を受けて効果的な除染方法や除染範囲の検討,将来の線量率の予測等を行い、除染実施にかかわる助言や技術指導に活用しています。今後は、より線量の高い居住制限区域や帰還困難区域の除染,福島県の面積の7割を占める森林等に対するRESETの活用を予定しています。