図3-12 原子力機構核図表2014の概観図
図3-13 核図表2014の表紙
図3-14 発見された核種数の変遷
私たちの身の回りにある物質は全て原子からできていますが、原子はその1万分の1の大きさの原子核とその周りを取り巻く電子からなっています。原子核は陽子と中性子という2種類の核子からできていて、その組合せ方で原子核の種類と性質(安定に存在するか,放射線を出すかなど)が定まるのです。では、組合せと性質の関係はどのようになっているのでしょうか。また、その組合せはどこまで可能でしょうか。
そのような疑問に答えるべく原子核研究者は様々な組合せの原子核を合成し、その性質を調べてきました。しかしその数が年々増え、現在極めて多くのデータとなっています。そこで、原子核研究者はその性質を俯瞰的に見るため、陽子の数と中性子の数を縦軸と横軸にとって、あたかも地図のように原子核の性質を表す方法を作り出しました。これを核図表と呼びます。
原子力機構では、1977年以来、原子力の基礎データである原子核壊変データの最新知見を反映した「原子力機構核図表」を約4年ごとに更新してきました。そして今回、大幅な改訂とともに「原子力機構核図表2014」を公開しました(図3-12,図3-13)。
今回作成した核図表2014は、これまで実験的に存在が確認された3150核種を掲載し、そのうち9割を超える2916核種の壊変半減期の評価値を掲載しました。実験的に確認された核種数は前回2010年版から約200個の増加となります。また、1977年から40年弱の間に約1000個の同位体が新たに合成、発見されたことが分かりました(図3-14)。
ほかの核図表に見られない原子力機構核図表の大きな特徴の一つは、未発見原子核の性質までも、原子核の理論予測の成果を用いて収録していることです。本核図表では1578核種の未知の半減期及び壊変様式について理論予測値を収録しています。また、今回より、極短寿命(10-20秒以下)の原子核の新たな追加や、原子核の存在限界の目安となる境界線(ドリップ線)などを新たに掲載しています。これにより未知元素・同位体合成実験の最先端研究ツールとして国内外の研究者に広く利用できます。
また、本核図表は高校生や一般の方々に対し、宇宙における元素の起源や原子炉における放射性核種の生成や変換についてなど、原子核に関する様々な現象を理解するための教材として親しみながら利用できます。今後より多く利用されることを期待しています。