図6-4 軽水炉使用済燃料の潜在的有害度
図6-5 高温ガス炉標準炉心と提案炉心の使用済燃料の潜在的有害度(全核種)
原子炉から取り出された使用済燃料は再処理され、高レベル放射性廃棄物は地層深く処理されます。その公衆被ばくは自然の被ばくレベルより十分に低い値に抑えられます。一方で、日本学術会議が高レベル放射性廃棄物の放射性毒性を総量管理すべきとの新たな基準を示しました。そして、核変換技術の研究が推奨されました。
私たちは、優れた固有の安全性を有し、電気及び高温の熱を供給できる高温ガス炉で、核変換自体が不要な、放射性毒性の発生自体を抑える研究を行いました。
放射性毒性は潜在的有害度で表されます。この概念自体が総量管理の考え方に則ったものです。潜在的有害度が天然ウラン(U)レベルまで減衰するまで、放射性廃棄物は管理されるべきです。
図6-4に軽水炉使用済燃料の潜在的有害度を示します。特に、プルトニウム(Pu)とアメリシウム(Am)の有害度が問題です。これらはU-238から発生します。核分裂するU-235だけの燃料を作れば、有害度発生が抑えられます。そこで、現実的に製造できる93%濃縮の高濃縮Uの利用を提案しました。また、イットリア・安定化・ジルコニア(YSZ)と呼ばれる化学的に安定な物質で固化し、さらに、被覆粒子燃料に加工することなどで、核拡散に対する抵抗性を極めて高くしました。
結果を図6-5に示します。高温ガス炉標準炉心と提案した高濃縮U・YSZ固化被覆粒子燃料炉心(提案炉心)の使用済燃料の潜在的有害度です。天然Uレベルまで減衰する期間が800年程度に激減しており、十分に管理が可能であると考えます。
また、被覆粒子燃料は地下水に対し100万年程度の耐久性を示し、YSZの浸出率はガラス固化体の100分の1との報告があり、直接処分に向いた燃料です。また、提案炉心は革新技術を必要としません。さらに、経済性に関しても検討した結果、発電原価の増加は5%に収まることが分かりました。
次に、このシステムの持続性について検討しました。Uは海水中にほぼ無尽蔵に存在し、その存在量は7000万年分の発電量に匹敵します。その一方で、回収費用はUの市場価格の2倍程度になると評価されています。しかし、海水U利用による発電原価に対する増加は6%と低い値です。高温ガス炉は直接ガスタービン発電システムの効率の高さと簡素さにより高い経済性が得られます。本提案と海水Uの利用の両者のコスト増を合わせても、軽水炉より安価な発電原価が得られます。