8-2 休止ウラン鉱山における鉱さいたい積場の跡措置

−長期的に安定な天然材料を用いた覆土の設置−

図 8-6 人形峠環境技術センター鉱さいたい積場

図 8-6 人形峠環境技術センター鉱さいたい積場

鉱さいたい積場は、上流側の「廃砂たい積場」(緑色着色部分)及び下流側の「廃泥たい積場」から構成され、かん止堤の上流に鉱さい等をたい積している施設です。

 

図 8-7 廃砂たい積場に設置した覆土の構造及び材料
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図 8-7 廃砂たい積場に設置した覆土の構造及び材料

覆土は、鉱さいの分布範囲を覆うように設置し、異なる目的を有する層から構成される多層構造とし、浸透した雨水を場外に排水するため勾配を付けました。ベントナイト混合層の上位には、表に示す四つの層を示しました。

 


人形峠環境技術センターでは、事業休止中のウラン鉱山である人形峠鉱山を鉱山保安法に基づき管理するとともに、基礎データを取得しながら恒久的な措置である「鉱山跡措置」に取り組んでいます。

鉱山跡措置は、鉱害防止の観点のみならず、放射線防護の観点から線量が覆土後にバックグラウンド値を除き年間1 mSv以下となるように進めています。また、要求される安全性を満足しつつ、各段階において技術的に最適であり、コストに無駄がないように進めています。対象施設のうち、岡山県三大河川の一つである吉井川源流部に位置する鉱さいたい積場を、環境への安全性を考慮し跡措置の最優先と位置付けています。

当たい積場は、安定な基盤岩上に設置したコンクリートかん止堤の上流に鉱業活動により発生した鉱さい等をたい積するとともに、坑道から発生する水を坑水処理するまで一時的に貯留する役割を担っています。

当たい積場の跡措置は、まず上流側の湛水しておらず粗粒分が卓越する「廃砂たい積場」に、線量,ラドン散逸量及び雨水浸透量の低減化を目的とした覆土を2011年度から2012年度にかけて設置しました(図8-6)。覆土は長期間にわたり安定である必要があることから天然材料を用いることとし、異なる目的を有する複数の層から構成される多層構造を採用しました(図8-7)。このうち「ベントナイト混合層」には、浸透した雨水を通りにくくするとともに、鉱さいから発生するラドンを減衰させて地表からの散逸量を少なくすることを目的とし、粘土鉱物を主成分とし水分を含むと膨潤する特性を有する「ベントナイト」を材料とした混合土を用いました。また、浸透水を場外へ排水するための水を通しやすい材料を用いた「排水層」をその上位に設置し、かつ覆土全体に勾配を付けた構造とすることで、浸透した雨水が廃砂と接触する量を低減することにより坑水処理の負荷を低減できるようにしました。あわせて、浸透水をたい積場外へ流送する排水路の設置等を行いました。

現在、設置した覆土が当初の目的を満足し期待された効果を有することの確認をするためモニタリングを行っています。項目は沈下量,排水量,水質,放射線量等です。今後は、モニタリングを継続するとともに、その結果をたい積場下流側の「廃泥たい積場」の跡措置に反映する計画です。