8-6 大深度地下において坑道への湧水を抑制する

−瑞浪超深地層研究所の施工対策技術について−

図8-14 「瑞浪超深地層研究所」 の研究坑道
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図8-14 「瑞浪超深地層研究所」 の研究坑道

研究坑道レイアウトとグラウチングの実施場所です。

 

図8-15 深度500 m研究アクセス南坑道プレグラウチングの評価例
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図8-15 深度500 m研究アクセス南坑道プレグラウチングの評価例

プレグラウチングによる湧水抑制の効果を表したグラフです。坑道約16 m区間でグラウチングなしの予測値960.5 L/分に対して、グラウチングを実施することにより実測値35.3 L/分に低減(グラウチングなしと比較し約4%に低減)しました。

 

図8-16 深度500 m研究アクセス南坑道におけるポストグラウチング

図8-16 深度500 m研究アクセス南坑道におけるポストグラウチング

ポストグラウチング(坑道掘削後にグラウチングを実施)の概略図です。

 


東濃地科学センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として、深地層の科学的研究を進めています。花崗岩を対象とした「深地層の研究施設」である瑞浪超深地層研究所は、地表から地下500 mまで研究坑道を掘削するという我が国初の試みであり、工事では大深度の地質環境に加え脆弱部や湧水など様々な条件に応じた掘削・対策工法の最適化に向けた技術の確立を進めています。得られた知見は、地層処分事業及び国の安全規制に必要となる技術基盤の整備という観点で重要な成果となるものです。

研究坑道掘削においては、施工対策技術として必要に応じて湧水抑制対策を実施しました。研究坑道は、坑道掘削に先立ち掘削領域を対象にボーリング調査を実施し、掘削領域の地質や地下水状況を把握した上で掘削しています。ボーリング調査により大量湧水が発生する可能性が高いことが分かった範囲を対象に、プレグラウチング(坑道掘削に先立ち掘削範囲の周辺の割れ目にセメントミルクを注入する工法)により湧水を抑制してきました(図8-14,換気立坑の深度200 m付近や400〜460 m付近,300 m研究アクセス坑道,500 m研究アクセス南坑道など)。湧水抑制の効果を高めるため、ボーリング調査からの情報をもとに、地下水浸透理論を用いて坑道周辺の透水性を低下させる割合やセメントの注入範囲(改良幅)を設定する手法を開発しました。この手法に沿って施工することにより、坑道掘削時の湧水量を抑制することができました(図8-15)。改良幅は3 m以上では湧水抑制効果は大きく変わらないと評価し、3 mで施工しました。

さらに深度500 m研究アクセス南坑道では、湧水抑制を可能とする新たな技術の適用性を確認することを目的として、プレグラウチングに続いて、坑道内の湧水が比較的多い区間約16 mを対象にポストグラウチング(坑道掘削後に周辺の割れ目にセメントミルクを注入する工法)を実施しました(図8-16)。この結果、坑道への湧水量をさらに抑制できることを確認しました。今後、プレグラウチングとポストグラウチングの組合せによるウォータータイトグラウト技術の実証に取り組んでいく予定です。