8-7 岩盤中の物質移動特性をどのように評価するか

−幌延深地層研究所を活用した原位置試験と室内試験に基づく検討−

図8-17 原位置試験装置のシステム
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図8-17 原位置試験装置のシステム

片方のボーリング孔からトレーサーを流し、もう片方のボーリング孔で観測されるトレーサーの濃度を分析して亀裂内の物質移動特性を評価します。

 

図8-18 原位置試験結果とフィッティング解析による破過曲線
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図8-18 原位置試験結果とフィッティング解析による破過曲線

ウラニンについては、(a)1経路モデルよりも2経路モデル(b)を仮定した方が試験結果をより良く再現できています。またCsについては、ウラニンと比べて高い分散が確認できたとともに、破過曲線のピーク濃度がウラニンに比べて非常に小さいことから稚内層の岩盤はCsに対して収着性が高いことが確認できました。

 

図8-19 室内拡散試験の概略
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図8-19 室内拡散試験の概略

(c)岩石試料を2片にカットし、カット面に添加したCsの岩石への拡散挙動を調べます。(d)トリチウムの岩石試料への上下方向の拡散挙動を調べます。

 


地下水中の物質は、岩盤に発生した亀裂や粒子間隙中を、分散,拡散,収着といった現象を伴って移動します。地層処分における天然バリアの放射性核種に対する遅延性能を評価する上では、物質の移動経路を含めたこれら物質移動特性の評価手法を確立することが重要です。そこで、稚内層の珪質泥岩を対象として、幌延深地層研究センターの地下坑道を利用した原位置試験や地下坑道で採取した岩石試料を利用した室内試験を行い、物質移動特性を評価しました。

原位置試験では、亀裂内の移動経路や亀裂表面への収着特性を把握するために、深度250 mの地下坑道で非放射性物質を用いたトレーサー試験を行いました。図8-17に示すように、2本のボーリング孔のうち片方のボーリング孔へトレーサーを投入し、片方のボーリング孔に到達したトレーサーの濃度変化を取得しました。その結果、図8-18(a)に示すように、セシウム(Cs)の破過曲線のピーク濃度がウラニンの破過曲線のピーク濃度よりも小さいことから、稚内層に対してCsが比較的高い収着性を有することが確認できました。また、収着性トレーサーであるCsと非収着性トレーサーであるウラニンの破過曲線から分散長を算出した結果、Csの方がウラニンよりも大きいことが確認できました。この要因として、亀裂表面に収着したCsのうち、ごくわずかな量のCsが部分的に脱離していることが推定されます。さらに、亀裂内の物質の移動経路を、1経路(図8-18(a))及び2経路(図8-18(b))と仮定した場合でフィッティング解析を行った結果、2経路を仮定した解析結果の方が、トレーサー試験結果の再現性が良いことから、対象とした亀裂内には少なくとも2経路以上の移動経路が存在することが推定できました。

室内試験では、粒子表面への収着特性を把握するために、地下坑道で採取した岩石試料を用いた透過拡散試験を実施しました(図8-19)。その結果、稚内層の珪質泥岩に対するCsとトリチウムの拡散係数はそれぞれ2.9×10-12 m2/s及び3.4×10-10 m2/sと算出されました。また、粉末状にした岩石試料を用いた収着試験から、Csの分配係数は488 mL/gと算出されました。このように、室内試験からも、稚内層に対してCsが高い収着性を有することが確認できました。今後、原位置試験と室内試験を組み合わせることで、より信頼性を有した物質移動特性の評価手法の確立に向け、本試験で得られた知見やデータの取りまとめを進める予定です。