1-16 汚染土壌を公園などに埋設した場合の安全性

−埋設場所からの放射性セシウムの移行に関する原位置試験−

図1-38 美浦村の試験場所の準備状況

図1-38 美浦村の試験場所の準備状況

6 m四方の穴を掘削し、2 m四方の遮水板を設置しました。この遮水板の中に表層を剥ぎ取った除去土壌を図1-39のように埋設して、試験を実施しました。

 

図1-39 遮水板に囲まれた試験エリアの三層構成

図1-39 遮水板に囲まれた試験エリアの三層構成

底部土壌(清浄土,厚さ50 cm)の下に土壌水採取器を設置しました。汚染された表土(除去土壌)は厚さ100 cmに埋設し、その上を清浄土(厚さ30 cm)で覆土しました。この試験エリアから定期的にコアボーリングを行い、放射性Csの鉛直分布を調べました。

 


東京電力福島第一原子力発電所事故で汚染された表土を除去した後、現場で穴に埋設し清浄な土壌で覆土すれば、放射性セシウム(Cs)は除去土壌から周りの土壌や地下水にほとんど移行しないであろうことは、中国やカナダで過去に行われた野外での核種移行試験の結果等から推定できていました。本研究では、茨城県美浦村の一つの公園と埼玉県三郷市の二つの公園においてその埋設を実際に試行し、1年にわたって放射性Csの移行を原位置試験によって調べ、その推定を実証しました。

公園内の汚染された表層(3 cm)土壌を除去し、1 m程度の深さの穴(図1-38)に埋設し、散水によって放射性Csの移行を加速しました。水が埋設した除去土壌を通って流下するように、2 m四方を遮水板で囲いました。8〜10年分の流下水量に相当する3200〜3900 mmの散水を行いました。図1-39に示すように埋設場所のコアボーリングを3ヶ月ごとに行い、土壌コアの鉛直方向の放射能分布を分析しました。除去土壌中の放射性Cs濃度1000〜3000 Bq/kgに対し、覆土や底部土壌では40 Bq/kg未満でした。また、埋設した除去土壌中を流下した水を底部土壌の下に設置した土壌水採取装置で採取し、分析しました。これらの分析からは、放射性Csの動きは観測されませんでした。

また、実験室に土壌試料を持ち帰って実施した試験(カラム移行試験及び収着試験)によって、放射性Csが汚染土壌からほとんど溶出しないことや、たとえ溶出しても周囲の土壌に収着されてほとんど移行しないこと(地下水の流速の7000分の1以下の移行速度)を示すデータを得ました。試験は1年間で終了しましたが、移流拡散モデルによるシミュレーション解析を100年間について行ったところ、放射性Csはほとんど移行せずにその場で減衰すること(10 cm移行した先での最大濃度はもとの濃度の1%)が示されました。

これらの結果から、日本の土壌においても放射性Csの移行は遅く、その移行範囲は限定的であることが実証されました。公園のような場所の汚染された表土を現場で集めて穴に埋設し、清浄な土壌で覆土するという方法は、汚染土壌からの直接的な被ばくを防ぐとともに、地下水の汚染も防止するのに有効であり、汚染土壌の処分方法の候補の一つです。

本研究は、原子力機構が環境省に技術的な支援を行い創出した成果です。