図10-1 核不拡散・核セキュリティ総合支援センターの実施体制と連携体制
核不拡散・核セキュリティ総合支援センターは、国内外の関係機関と連携し、核不拡散・核セキュリティに関し、以下の技術開発や人材育成等を実施しています(図10-1)。
日本のための、そして世界のための技術開発
国内外の動向を踏まえた核不拡散・核セキュリティ強化のための技術開発に取り組んでいます。東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の溶融燃料等に含まれる核物質の量を測定する技術開発や使用済燃料を直接処分した場合の保障措置*技術の検討を実施しています。また、核検知・測定技術開発に関し、核共鳴蛍光(NRF)による重遮へい物内核物質探知技術、外部パルス中性子源を用いた多種多様な物質中の核物質非破壊測定技術、核分裂生成物を含むプルトニウム溶液のモニタリング技術の開発を行うとともに、核鑑識技術の開発については、確度向上及び迅速化を目指した技術の高度化を進めています。その他、将来の研究開発の方向性を主に技術的観点で議論する国際シンポジウムを2017年6月に開催し、核鑑識の理解増進とそのニーズ、各国の取組状況について検討しました。
*核物質が平和目的だけに利用され、核兵器等に転用されないことを担保するために行われる検認活動のこと
技術的知見に基づいた政策立案支援
原子力施設における核不拡散(保障措置:Safeguards))と核セキュリティ(Security)の相乗効果に係る検討を実施しています。両者(英語の頭文字から2Sと称する)をともに強化、推進していく観点から、2Sの相乗効果に係る国際的な動向調査や、国際機関等が例示する2Sの共用方策について調査するとともに、将来、核燃料サイクル施設において、2S各々で使用する計測・監視技術や機器及び情報を施設間でお互いに共有する可能性を視野に入れて適用性を調査しました。
人材育成支援
2010年4月の核セキュリティ・サミットでの政府の表明に基づき、2011年4月からアジア諸国を始めとした各国への人材育成支援事業を開始し、2017年3月までに、核セキュリティや保障措置に関して国内外で実施したセミナー、トレーニング等に、国内外から約3276名が参加しています。こうした活動は、アジアを中心とした地域で人材育成に貢献しており、日米両政府から高く評価されています。
技術的知見・経験をベースとした国際貢献
国際的な核実験監視体制の確立に向けて、包括的核実験禁止条約(CTBT)国際監視制度施設や国内データセンター(NDC)の暫定運用を実施しています。2016年9月の第5回北朝鮮核実験では、CTBT放射性核種観測所データの解析評価結果を国等へ適時に報告し、CTBT国内運用体制に基づく国の評価に貢献しました。トピックス10−1は、地下核実験の検知に有効な放射性キセノン観測に関し、医療用RI製造施設の影響評価を行った研究成果です。
原子力機構が計画する核物質輸送及び研究炉燃料に係る業務支援
各研究開発拠点が行う核物質輸送を支援するとともに、試験研究炉用燃料の需給及び使用済燃料の処置方策の検討を実施しています。高濃縮ウラン燃料の対米返還輸送を計画的に推進することにより、世界的な核セキュリティを強化してきた地球規模脅威削減イニシアティブ(GTRI)に貢献しています。