4-2 高レベル廃棄物中の核種の効率的な分別

−アメリシウムとキュリウムを効率良く分離−

図4-3 新規抽出剤ADAAM(EH)

図4-3 新規抽出剤ADAAM(EH)

ADAAM(EH)は、MAに対する優れた分離性能と高い実用性を持った画期的な抽出剤です。

 

図4-4 フード内のミキサセトラ装置

図4-4 フード内のミキサセトラ装置

抽出8段、洗浄8段の第1ミキサセトラと逆抽出16段の第2ミキサセトラから構成されます。

 

図4-5 ミキサセトラでの連続抽出試験の条件

図4-5 ミキサセトラでの連続抽出試験の条件

ADAAM(EH)を溶解した有機溶媒と金属イオンを含む硝酸水溶液を向流接触させます。Amをプロダクト中に、Cmを抽出残液中に移行させて相互分離します。

 

表4-1 連続抽出試験の結果

ADAAM(EH)を用いたミキサセトラ連続抽出によって、AmとCmの良好な分離を達成しました。

表4-1 連続抽出試験の結果

 


原子力機構では、高レベル放射性廃棄物(HLW)の減容化や環境に対する負荷低減等を目的として、「分離変換技術」の研究開発を進めています。分離変換とは、HLW中に含まれる様々な元素や核種を核的性質や放射性毒性、利用目的に応じ分離し、長半減期核種を非放射性核種または短半減期核種に核変換する技術です。分離プロセスでは、HLW溶液中から長半減期のアメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)といったマイナーアクチノイド(MA)が回収されますが、Cmは発熱するため、核変換用燃料を取り扱う上でAmとの分離が求められます。しかし、AmとCmは性質が極めて似ており分離はたいへん困難であることから、実際のプロセスで利用可能な分離法はいまだ開発されていません。

本研究では、効率的にAmとCmを分離するために、大量・連続処理に適した溶媒抽出法を採択しています。溶媒抽出試験の結果、図4-3に示す新しい抽出剤アルキルジアミドアミン(ADAAM(EH))がAmに対し、高い選択性を示すことが分かりました。また、ADAAM(EH)は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)原子から構成され、使用後に完全焼却でき二次廃棄物をほとんど生じません。さらに、溶解性、抽出容量、反応速度、相分離性、化学的安定性、経済性に優れており、非常に高い実用性を持っています。

ADAAM(EH)を用いて、ミキサセトラ抽出器(MS)によるAmとCmの連続抽出試験を実施しました。図4-4にフード内に設置したMS、図4-5に試験条件を示します。抽出と逆抽出に各1台の多段MSを使用し、有機溶媒は0.25 MのADAAM(EH)を溶解したドデカン溶液、フィード液はトレーサー濃度のAmとCmを含む1.5 M硝酸水溶液(HNO3)、洗浄液と逆抽出液は1.5 M、0.05 M HNO3としました。有機溶媒と水溶液を向流接触させ、5時間の試験を行った結果(表4-1)、Amは全量がプロダクトへ移行し、一方、Cmの移行率は目標値である10%未満を達成しました。これにより、核変換用燃料の製造や取扱いを容易にすると同時に、Cmの処理・処分の負担軽減が実現できます。

今後は、ADAAM(EH)の抽出メカニズム解明や耐放射線性試験を実施します。さらに、ホットセルでのHLW実液を用いた試験へと発展させ、分離プロセスの完成を目指します。