8-2 埋設処分する廃棄体の放射能を確認する

−照射後試験施設から発生する廃棄物の放射能評価手法の検討−

図 8-6 照射後試験施設から発生する廃棄物の例

図 8-6 照射後試験施設から発生する廃棄物の例

原子炉で照射した照射燃料・材料、試験に用いたウエスや作業衣等が廃棄物として発生します。

 

図 8-7 廃棄物から採取した可燃物試料の例

図 8-7 廃棄物から採取した可燃物試料の例

容器に収納された廃棄物の中から、ゴム手袋を試料として採取し裁断しました。

 

図 8-8 廃棄物から採取した試料と理論計算による核種組成比の比較

図 8-8 廃棄物から採取した試料と理論計算による核種組成比の比較

90Sr、99Tc、154Eu、234U、235U、238U、238Pu、239Pu+240Pu、241Pu、241Am、244Cmは、照射燃料・材料で汚染した試料の実分析値と理論計算値が良く一致しましたが、14C、63Niは違いが見られ、冷却材中の放射性クラッドの寄与、材料の元素組成の違いを考慮する必要性が示唆されました。なお、容器A〜Fは全て1種類の照射燃料・材料で汚染した廃棄物であり、対応した照射燃料・材料の照射条件に基づき、放射化・燃焼計算による理論的な核種組成比を算出しています。

 


私たちは、研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物の埋設処分に向けて、廃棄物中の放射能濃度の評価手法を確立する必要があります。研究施設等の中でも、原子炉で照射した燃料・材料(照射燃料・材料)を試験する照射後試験施設で発生する廃棄物(図8-6)は、照射燃料・材料に起因する多数の放射性核種が含まれ、これらの核種の合理的な放射能評価方法の確立が必要となります。

そこで、照射燃料・材料中の核種の放射化・燃焼計算に基づく核種間の放射能濃度比(核種組成比)を算出し、この核種組成比を用いて廃棄体中の放射能評価を行う方法を考案しました。具体的には、計算コード「ORIGEN-2」により、照射後試験に使用した照射燃料・材料中の種々の放射性核種と60Coまたは137Csとの間の核種組成比をあらかじめ理論的に算出しておき、廃棄物外部から測定した60Coまたは137Csの放射能濃度を用いて廃棄物中の複数の評価対象核種の放射能濃度をまとめて評価する手法です。

本検討では、埋設処分時の照射後試験施設の評価対象候補核種として、17核種(3H、14C、60Co、63Ni、90Sr、99Tc、137Cs、154Eu、234U、235U、238U、238Pu、239Pu、240Pu、241Pu、241Am、244Cm)を選定しました。これらの核種を対象として、照射後試験施設で実際に発生した可燃性廃棄物から試料を採取(図8-7)し、放射化学分析した結果から60Coまたは137Csの放射能濃度に対する核種組成比を求めました。一方、廃棄物に含まれる核種の起源となる照射燃料・材料の照射条件に基づいた、放射化・燃焼計算による理論的な核種組成比を算出し、理論計算と実分析値に基づく核種組成比を比較・検討しました。

その結果、燃料が汚染源である90Sr、99Tc、154Eu、234U、235U、238U、238Pu、239Pu+240Pu、241Pu、241Am、244Cmは、照射燃料・材料で汚染された廃棄物の実分析結果と理論計算結果による核種組成比は良く一致しました(図8-8)。一方、材料中の腐食生成物が汚染源である14C、63Niは実分析と理論計算による核種組成比に違いが見られました。この結果は、冷却材中の放射性クラッドの寄与や材料の元素組成の違いによる影響を考慮する必要性があることを示唆したものと考えられました。

引き続き、上記の影響の検討や、他の照射燃料・材料の条件における検討など、本評価方法の確立に向けて検討を進めて行きます。