核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)は、核兵器・核テロの脅威のない世界を目指して、国内外の関係機関と連携し、核不拡散・核セキュリティ分野における技術開発や人材育成等を実施しています(図10-1)。
日本のための、そして世界のための技術開発
国内外の動向を踏まえた核不拡散・核セキュリティ強化のための技術開発を実施しています。従来の技術では測定が難しい最新の技術開発に取り組み、東京電力福島第一原子力発電所事故の溶融燃料等の核物質の量を測定する技術や、核検知・測定に関し、核共鳴蛍光による重遮へい物内核物質探知技術、外部パルス中性子源を用いて、高放射性物質中の核物質等を非破壊で測定する技術の開発を行っています。最近では、日米で協力して、核セキュリティ事象における核・放射性物質の魅力度評価手法開発にも取り組んでいます。犯罪行為等に使用された核物質等の特徴を分析し、起源や履歴を特定する核鑑識技術の開発については、確度向上及び迅速化を目指した技術の高度化を進めるとともに、核・放射線テロ事象後を対象とした核鑑識技術開発に着手しました。トピックス10-1は、核鑑識で重要な要素の一つであるウラン精製年代測定でISCNが新たに開発した手法に関する研究成果です。
技術的知見に基づく政策研究
原子力施設における核不拡散(保障措置:Safeguardsと核セキュリティ:Security)の相乗効果について政策研究を実施しています。両者(英語の頭文字から2Sと称する)をともに強化、推進していく観点から、2Sの相乗効果の可能性を分析・評価し、効果が期待できる工程・条件を明らかにするとともに、将来の核燃料サイクル施設を想定し、2S各々で使用する計測・監視技術や機器及び情報を、相互に共有する可能性を視野に入れて、適用性・実現性の障害を評価し、その対応策を検討しています。
人材育成支援
2010年4月の核セキュリティ・サミットでの政府の表明に基づき、2011年4月からアジア諸国を始めとした各国への人材育成支援事業を開始し、2018年3月までに核セキュリティや保障措置に関して国内外で実施したセミナー、トレーニング等に、国内外から約3800名が参加しています。こうした活動は、アジアを中心とした地域で人材育成に貢献しており、日米両政府から高く評価されています。
CTBTに係る国際検証体制への貢献
国際的な核実験監視体制の確立に向けて、包括的核実験禁止条約(CTBT)国際監視制度施設や国内データセンターの暫定運用を実施しています。2017年9月の第6回北朝鮮核実験では、CTBT放射性核種観測所データの解析評価結果を国等へ適時に報告し、CTBT国内運用体制に基づく国の評価に貢献しました。
核物質輸送及び研究炉燃料にかかわる業務支援
各研究開発拠点が行う核物質輸送を支援するとともに、試験研究炉用燃料の需給及び使用済燃料の処置方策の検討を実施しています。高濃縮ウラン燃料の対米返還輸送を計画的に推進することにより、世界的な核セキュリティを強化してきた地球規模脅威削減イニシアティブに貢献しています。
理解増進のための取組み
核不拡散・核セキュリティ分野の動向やそれらに対する分析、ISCNの活動等を掲載したニューズレターのメール配信や国際フォーラムの開催等により、国内外における本分野の理解増進に貢献しています。