1-19 福島の環境回復に係る研究成果をより身近なものへ

−包括的評価システムの開発と根拠となる科学的知見の明示−

図1-41 包括的評価システム全体及び各構成要素概念図

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図1-41 包括的評価システム全体及び各構成要素概念図

包括的評価システムは、原子力機構や他機関が収集した調査データを統一的なフォーマットで取りまとめ、公開する「環境モニタリングデータベース」、各種解析ツールの解析結果を閲覧できる「統合解析支援環境(整備中)」及びそれらの成果をQ&A形式で分かりやすく取りまとめた「環境回復知識ベース」の三つの要素から成っています。

 


東京電力福島第一原子力発電所の事故により環境中に放出された放射性物質、特に放射性セシウム(Csは、現在でも森林にその多くが沈着しています。時間の経過とともに、これら環境中の放射性物質は水流や風などの自然の駆動力によって移動し、最終的には生活圏や海に到達し、生活や健康に影響を及ぼす可能性が懸念されています。

これらの全体像を把握し、影響を評価し、対策を講じるために、原子力機構や多くの研究機関で調査研究が実施されていますが、それらは報告書や論文、パンフレット、インターネットといった様々な媒体に分散して存在しており、住民や自治体の方々が必要な情報を取得するにはかなりの労力が必要となります。そのため、それら情報へ至る道しるべの整理として、私たちは、大学や複数機関からの協力を得て、放射性Csの環境動態研究及び福島の環境回復に関する科学的知見を収集し、私たちの調査研究成果と合わせて取りまとめました。そして、放射性Csの環境動態に関して包括的な評価を可能とするシステム(包括的評価システム)を開発しました(図1-41)。

これらの調査研究で得られた測定データ等は、環境モニタリングデータベースに共通フォーマットで集約されており、可視化も可能です。また、今回構築した放射性Csの環境動態に関する科学的知見の根拠情報(環境回復知識ベース)を参照することで、利用者が知りたい事項を様々な媒体を介することなく、詳細さの程度に応じた複数段階の知識を一つのホームページから閲覧することができます。さらに、より詳細な放射性Csの環境動態を知りたい場合には、統合解析支援環境を利用することで、環境条件の組合せ土地利用、地形、植生及び放射性Cs沈着量)を設定することにより、その解析結果を閲覧することができます。加えて、それらの成果をQ&A形式で分かりやすく取りまとめ、利用者の知識レベルに応じた情報提供をできるようにしました(環境回復知識ベース)。このように、利用者の様々なニーズに応じることができるシステムを構築しました。

現在、森林中における放射性Csの循環や、河川に流出する溶存態Csの起源が、放射性Csの動きの把握に重要であることが分かってきています。今後はこれらに関する調査研究を進め、長期的な放射性Csの動きを把握し、それらの知見に基づいて情報発信を進めることで住民の不安の低減等に努めていきます。また、調査研究の進展に伴って、最新の情報をいかに反映して更新していくかについても課題として検討を進めていきます。



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