1 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

英知を結集し1Fの廃止措置と環境回復に役立つ研究成果の提供を目指す

図1-1 福島県内における主要な研究開発拠点とその活動状況

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図1-1 福島県内における主要な研究開発拠点とその活動状況

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)の事故以降、原子力機構は我が国で唯一の原子力に関する総合的な研究開発機関として、1Fの廃止措置及び環境回復に係る研究開発に取り組んでいます(図1-1)。

廃止措置に関しては、政府が定めた中長期ロードマップを踏まえ、国内外の英知を結集する廃炉国際共同研究センターを中心に、事故進展シナリオの解明(トピックス1-11-2)、燃料デブリの取出し(トピックス1-31-4)、放射性廃棄物の処理・処分(トピックス1-51-6)、遠隔操作技術(トピックス1-71-81-9)に係る研究開発を進めています。

研究推進においては、2017年度に同センターの中核となる「国際共同研究棟」(図1-1右下)の運用を開始したことで、産学官による研究開発と人材育成を一体的に進める体制が強化され、国内外の研究者が参集する会合を地元で多数開催することができました。2018年度には「廃炉研究等推進事業費補助金」が創設されました。これまで以上に大学・研究機関との連携を強化し、研究開発と人材育成をより安定的かつ継続的に実施する体制を構築していきます。

廃止措置や災害対応等に必要な遠隔操作機器の開発・実証試験フィールドの外部供用を実施している楢葉遠隔技術開発センター(図1-1左下)においては、2016年度の本格運用からこれまで100件を超える産学官による利用(2016年度:38件、2017年度:64件、利用割合:図1-1左下)がありました。今後も外部利用に向け、ロボットの試験方法の開発・設計、シミュレーション技術等の開発を通じて試験設備の高度化を図っていきます。

燃料デブリや様々な放射性廃棄物の分析・研究を行うための施設として、大熊分析・研究センターを整備しています。同センターは、施設管理棟(居室、会議室、ワークショップ等から構成)、第1棟及び第2棟で構成されます(図1-1右上)。施設管理棟は2018年3月から運用が開始されました。現在、低、中線量のがれき類、水処理二次廃棄物等の分析を行う第1棟については建設を進めており、燃料デブリ等の分析を行う第2棟は詳細設計を行っています。

これら三つのセンターは、福島イノベーション・コースト構想の一翼を担う廃炉関連施設とされており、1Fの廃止措置の加速化に貢献していきます。

環境回復に関しては、福島県環境創造センターが策定した中長期取組方針等に基づいて、原子力機構、福島県、国立環境研究所の三者で研究開発等に取り組んでいます(図1-1左上)。2017年4月に発生した帰還困難区域内の十万山林野火災の際には、地域の要請を受けて、三者が合同で火災に伴う放射性セシウムの挙動調査・解析を実施しました。福島環境安全センターを中心に進めている研究開発としては、未除染の森林、河川、沿岸海域等の線量評価手法の確立を目指した環境モニタリング・マッピング技術開発(トピックス1-101-11)や環境中に放出された放射性物質の移動挙動を解明・予測することを目的とした環境動態研究(トピックス1-121-131-141-15)、除染・減容技術等に係る研究開発(トピックス1-161-171-18)があります。さらに研究成果については、研究者、自治体、地域の方々等の多様なニーズに応じたシステムを構築して、公表していきます(トピックス1-19)。

福島研究開発部門は、今後とも国内外の英知を結集し、1Fの廃止措置や環境回復のための研究成果を生み出し、発信していきます。また、地域の企業や研究・教育機関など関係機関と連携、ネットワークを構築することにより、地域産業の活性化や人材育成につなげ、福島復興に貢献していきます。