1-8 レーザーによる遠隔サンプリングを目指して

−レーザーを用いたコンクリートのサンプリング技術開発−

図1-19 レーザー照射部の様子と照射部周辺の温度分布

拡大図(236kB)

図1-19 レーザー照射部の様子と照射部周辺の温度分布

レーザーの照射条件は、パルス幅10 ms、ピーク出力1.6 kW、繰り返し周波数10 Hz、スポット径1.1 mmです。時間t0はレーザーを照射した瞬間を示します。(a)〜(f)は高速度カメラで撮影した映像であり、(a)〜(c)がレーザー照射中、(d)〜(f)はパルス照射間のレーザー停止中の様子です。(g)及び(h)は赤外線サーモグラフィで撮影したレーザー照射部周辺の温度です。直接レーザー照射中の挙動を観察することで、現象の把握を行いました。

 

図1-20 コンクリートのサンプリング試験結果

拡大図(620kB)

図1-20 コンクリートのサンプリング試験結果

(a)はレーザーピーク出力2 kWで四角柱型のサンプリング試験を行った結果です。32秒で20 mm角、深さ10 mmのサンプリングが可能となりました。(b)はレーザーピーク出力6 kWで円筒型のサンプリング試験を行った結果です。ピーク出力を増加させることで、直径10 mm、深さ50 mmのサンプリングが可能となりました。

 


東京電力福島第一原子力発電所の安全で確実な廃止措置は、国家的課題です。この廃止措置においては、原子炉圧力容器、原子炉格納容器等の構造物の長期健全性が重要視されており、それらの評価を行うための研究開発が行われています。他方、高度経済成長期に建設された道路、トンネル等の公共インフラにおいても老朽化に伴い、その健全性保持と更新が国家的課題です。これらに共通する技術的な課題は、作業者の安全を確保し、かつ効率的に検査可能な技術の確立です。廃止措置では、高線量等の理由により人が近づいて作業を行うことが困難であり、公共インフラでは、高所作業等で作業者が常に危険にさらされることから、ロボット等の遠隔操作機器を組み合わせた技術が必要不可欠です。

レーザー技術は、遠隔操作機器とのマッチング性、コンパクト性等の優れた特徴を有することから、各分野で注目されています。本研究では、このレーザー技術を活用してコンクリート構造物を対象とした遠隔サンプリング技術の開発を行いました。レーザーは準連続発振(Quasi Continuous Wave:QCW)ファイバーレーザーを用いており、この特徴は、光軸調整が不要なことや、光ファイバーによるフレキシブルな導光等がありますが、特筆すべきはレーザー照射時の時間幅(パルス幅)をミリ秒に制御しつつ、高ピーク出力で照射可能なことです(パルス照射)。図1-19にレーザー照射中の様子とレーザー照射部周辺の温度分布を示します。図1-19(a)〜(c)に示すように、レーザーをコンクリートに照射すると、そのエネルギーにより表面が溶融、蒸発するとともに電離が起こり、レーザーと同軸上にレーザー誘起プラズマ・プルームが生成します。これにより、レーザーエネルギーの物質への吸収が促進され、高温・高圧状態が生じ溶融物が周辺に飛散します。ただし、パルス照射間のレーザー停止中も図1-19(d)〜(f)に示すように、プルームは消失しますが、溶融物の飛散は継続します。図1-19(g)、(h)に示すように、レーザー照射部の溶融物はレーザー停止中も1300 ℃以上に維持されます。以上のことから、今回の試験では、連続照射よりもレーザー停止中に溶融物を排出でき、より深い部分にレーザーを到達させることが可能なパルス照射の有効性を示すことができました。さらに、適切なパルス照射は照射部を溶融状態に保ちつつ、周辺への熱影響を減少させることが期待できることが分かりました。

図1-20は、レーザー照射によるコンクリートのサンプリング試験の一例です。レーザーピーク出力を増加させることで、深さ50 mm厚のサンプリングが可能となりました。

本技術の実用化に向けては、コンクリートの機械的強度低下を防止するため、さらなる熱影響部の制御等の課題はありますが、近い将来、廃止措置や公共インフラ補修への貢献が期待できます。

本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の成果の一部です。



| | | | |