6-1 高温ガス炉の安全性を追求する

−極大地震時における高温ガス炉の事故シナリオ影響評価−

図6-2 地震に起因する被ばく上最も厳しい事故シナリオ

拡大図(101kB)

図6-2 地震に起因する被ばく上最も厳しい事故シナリオ

二重管やスタンドパイプ破損に加え、原子炉建屋損傷による炉心空気侵入量増加や炉心冷却能力低下、黒鉛構造物損傷による炉心冷却能力低下や原子炉停止失敗を想定します。

 

図6-3 原子炉建屋や黒鉛構造物損傷時の炉心最高温度変化

図6-3 原子炉建屋や黒鉛構造物損傷時の炉心最高温度変化

原子炉建屋損傷時(③)は炉心放散熱量が低下し、原子炉建家健全時(①、②)に比べて炉心最高温度が上昇します。黒鉛構造物損傷時(②)は原子炉停止に失敗し、再臨界発生により炉心高温状態が保持されます。

 


高温ガス炉の実用化に向け、発生可能性が極めて小さい事故についても、安全性確認が必要です。そこで、プラント状態が急峻に変化する条件(クリフエッジ)を明らかにすることを目標に、敷地境界での被ばく上最も厳しい事故シナリオを検討しました。

事故シナリオについては、地震に起因して燃料酸化要因の炉心空気侵入量が最大となる原子炉冷却材出入口部の二重管と制御棒を格納するスタンドパイプの同時破損に、原子炉建屋や黒鉛構造物損傷により複数の安全設備故障が重畳するシナリオを選びました(図6-2)。また、評価ではスタンドパイプ破損時の冷却材放出により浮上する制御棒位置変化、ダンパ閉止失敗による原子炉建屋への空気侵入、炉心を間接的に冷やすため原子炉建屋内に設けた空気流路閉塞、黒鉛構造物亀裂生成による制御棒挿入失敗や炉心からの放散熱量低下を考慮しました。

上記事故シナリオの各安全設備故障について影響を評価した結果、原子炉は事故直後、制御棒浮上により出力が過渡的に上昇するものの、ドップラー効果により直ちに未臨界に至り、温度上昇は120 ℃程度に抑制されました(図6-3)。その後、炉停止初期の崩壊熱により炉心最高温度はゆっくり上昇しますが、炉心での発生熱は構造物中の熱伝導や放射伝熱により大気や土壌に放散され、事故後、数十〜百時間で炉心からの放散熱量が崩壊熱量を上回り、以後、炉心最高温度は単調に減少しました(図6-3①、③)。このとき、原子炉建屋損傷時でも炉心最高温度は過去の試験で燃料破損が生じないことが確認された温度である1900 ℃に至りませんでした(③)。黒鉛構造物損傷による制御棒挿入失敗時は、事故後、数百時間で再臨界が発生しますが、炉心での崩壊熱や核分裂による発生熱量の総和は炉心からの放散熱量に一致し、炉心最高温度は一定保持されました(②)。放射性物質放出については、事故直後の原子炉建屋頂部からの高所放出量はいずれの場合も変わりません。一方で、原子炉建屋損傷時(③)は原子炉建屋健全時(①、②)に比べ、事故後、炉心最高温度上昇により燃料被覆を放射性物質が拡散し、地表面レベルでの漏えい量が増大するため、事故収束期間と想定した3ヶ月間の敷地境界での被ばく線量積算値は約6倍増加しますが、クリフエッジは見いだされませんでした。

本研究は、文部科学省の国家課題対応型研究開発推進事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」の一部として実施しました。



| | | | |