8-4 断層の連続性を推定する手法を構築

−岩石の力学的性質に着目した新指標DIを提案−

図8-10 (a)破壊実験において断層(人工亀裂で模擬)から派生した割れ目のタイプと(b)DIの関係

拡大図(980kB)

図8-10 (a)破壊実験において断層(人工亀裂で模擬)から派生した割れ目のタイプと(b)DIの関係

引張性割れ目(T)は引っ張り破壊の証拠を示す割れ目、せん断割れ目(S)は引っ張り破壊の証拠を示さず、ずれた証拠のみを示す割れ目のことを指します。

 

図8-11 コアに認められる天然の断層近傍の引張性割れ目頻度とDIの関係

拡大図(49kB)

図8-11 コアに認められる天然の断層近傍の引張性割れ目頻度とDIの関係

 

図8-12 断層の連続性とDIの関係

図8-12 断層の連続性とDIの関係

浅部は引張性割れ目が断層同士を良く連結させることが分かります。

 


断層は断層同士が連結し合うことにより大きくなることが知られています。その連結様式は様々ですが、図8-10(a)に示すような引張性割れ目が二次的な割れ目として断層から派生すると、断層が連結しやすくなることが知られています。しかし、どのような力学条件だとそのような割れ目が断層から派生しやすいのか、定量的には十分に理解されていませんでした。

本研究では、ダクティリティインデックス(DI)という新たな指標を用いて、断層から引張性割れ目が派生しやすくなる力学条件を理論解析、室内実験及び野外観察より検討しました。DIは岩石に実際にかかっている平均的な応力を岩石の引張強度で除した値で定義され、浅部ほど小さくなります。理論解析の結果、DIが2以下だと断層から引張性割れ目が派生しやすいことが分かりました。この結果は室内での破壊実験や天然のコア観察でも確認でき、実験ではDIが2以下だと引張性割れ目のみが断層(人工亀裂で模擬)から選択的に派生することが確認できました(図8-10(b)の試料番号434.85、448.20、445.85、445.90及び445.65)。コア観察では、DIが2以下の断層近傍に引張性割れ目が多く発達することが確認できました(図8-11)。これらの結果から同一の地層内でもDIに応じて浅部と深部で断層の連続性が異なることが考えられ(図8-12)、このような知見は、地層処分のサイト選定において地下水の流れを適切に評価する際に重要となります。