8-7 岩石の鉱物量比を効率的に測定する

−元素分析と画像処理を用いたモード測定手法の開発−

図8-18 本手法によるモード測定の概要

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図8-18 本手法によるモード測定の概要

岩石試料を走査型X線分析顕微鏡で分析し、取得した元素濃度分布の画像データを画像処理して、鉱物分布図を作成します。各鉱物分布図を画像解析することで、各鉱物の量比を求めます。

 


岩石の鉱物量比を示すモード組成は、岩石の研究を行う上で重要な情報で、主に薄片(岩石をガラスに接着して光が透過するまで薄くすり減らしたもの)を偏光顕微鏡で観察しながら鉱物を計数するポイントカウンティング法によって測定が行われています。しかし、この手法は、熟練者でも2〜3時間ほど集中して偏光顕微鏡で観察する必要がある、測定者の鉱物判別能力に結果が左右されるなどの問題点があります。そこで、この研究では、「難解な技術や知識を必要としない」、「簡便に行える」、「ポイントカウンティング法ほど測定者の鉱物判別能力に左右されない」という手法として、走査型X線分析顕微鏡と画像処理・解析ソフトウェアを用いたモード測定手法の開発を行いました(図8-18)。ここでは、石英、アルカリ長石、斜長石、黒雲母、普通角閃石からなる花崗岩を測定の対象としました。

この手法は、研磨した岩石または薄片試料を走査型X線分析顕微鏡で分析して、得られた画像データをパソコン上で画像処理・画像解析することで、各鉱物の量比を求めます。走査型X線分析顕微鏡は、試料表面にX線ビームを照射し、元素濃度の分布に関する情報が取得できる装置です。測定には特別な化学処理なども必要なく、設定した条件で自動的に試料表面を走査し、元素濃度分布を画像データとして得ることができます。この手法では、約18時間自動測定を行い、測定対象の鉱物に含まれるケイ素:Si、カリウム:K、アルミニウム:Al、カルシウム:Ca、鉄:Feの各元素の濃度分布図を取得します。この画像を画像処理ソフトウェアで読み込み、画像を一定の重ね順で画像処理することで、それぞれの鉱物の範囲を適切に示す鉱物分布図が作成できます。鉱物分布図を画像解析することで、各鉱物の分布面積が求められ、モード組成を計算することができます。ソフトウェアでの作業は一定の手順で行うので、実作業時間は30〜60分程度です。

本手法の測定結果は、同一試料で熟練者が行ったポイントカウンティング法の結果と比較しても、ほとんど変わりません。本手法では短時間で効率的に、個人の判別能力ではなく元素濃度に基づく定量的なモード組成が得られると言えます。また、この手法は粒径が100 µm以上で化学組成の異なる鉱物からなる岩石であれば、花崗岩以外の深成岩や半深成岩にも適用することができることを確認しています。

本報告は、経済産業省資源エネルギー庁の「地層処分技術調査等事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」の成果の一部です。