核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)は、核兵器・核テロの脅威のない世界を目指して、国内外の関係機関と連携し、核不拡散・核セキュリティ分野における技術開発や人材育成等を実施しています(図10-1)。
日本のための、そして世界のための技術開発
国内外の動向を踏まえた核不拡散・核セキュリティ強化のための技術開発を実施しています。核検知・測定技術開発に関し、核共鳴蛍光(NRF)による重遮へい物内核物質探知技術、外部パルス中性子源を用い高放射性物質中の核物質等を非破壊で測定する技術の開発を行っています。トピックス10-1は、NRF測定に影響を与える光弾性散乱についてシミュレーションツールキット「Geant4」に対応したコード開発に係わる成果です。2018年12月にリリースされたGeant4にそのコードが組み込まれ幅広い研究分野での計算の高精度化に貢献しました。犯罪行為等に使用された核物質等の特徴を分析し、起源や履歴を特定する核鑑識技術の開発については、確度向上及び迅速化を目指した技術の高度化、核・放射線テロ事象後の初動対応者向け検出器開発やAIを用いたデータ解析技術開発を実施しています。また、日米で協力して核・放射線テロ対策のための核・放射性物質の特性評価や脅威の削減方法の開発にも取り組んでいます。
技術的知見に基づく政策研究
関係行政機関からの要請に基づき、過去に非核化を達成した南アフリカや、核開発を試みたリビア、イラン、イラク等の非核化に向けた取組み事例を、核開発の動機、内外情勢、核開発の進捗、制裁等の効果等の観点で調査し、非核化達成のための要因分析を実施しています。また、原子力の平和利用の観点から、核兵器の解体、無能力化、廃止措置及びそれらの検証に係わる技術的プロセスについて調査検討を行います。
人材育成支援
2010年4月の核セキュリティ・サミットでの政府の表明に基づき、2011年4月からアジア諸国を始めとした各国への人材育成支援事業を開始し、2019年3月までに核セキュリティや保障措置に関して国内外で実施したセミナー、トレーニング等に、国内外から約4200名が参加しています。こうした活動は、アジアを中心とした地域で人材育成に貢献しており、日米両政府から高く評価されています。
CTBTに係わる国際検証体制への貢献
国際的な核実験監視体制の確立に向けて、包括的核実験禁止条約(CTBT)国際監視制度施設や国内データセンターの暫定運用を実施しています。CTBT機関(CTBTO)の核実験検知能力強化を目的として、日本政府が2017年2月にCTBTOに行った拠出によりCTBTOとの放射性希ガス共同観測プロジェクトを開始しました。同プロジェクトは専用の観測装置を設置し、北海道幌延町では2018年1月24日より、青森県むつ市では同年3月5日より観測を継続中で、国の政策実現に大きく貢献しています。
核物質輸送及び研究炉燃料に係わる業務支援
各研究開発拠点が行う核物質輸送を支援するとともに、試験研究炉用燃料の需給及び使用済燃料の処置方策の検討を実施しています。高濃縮ウラン燃料の対米返還輸送を計画的に推進することにより、世界的な核セキュリティを強化してきた地球規模脅威削減イニシアティブに貢献しています。
理解増進のための取組み
核不拡散・核セキュリティ分野の動向やそれらに対する分析、ISCNの活動等を掲載したニューズレターのメール配信や国際フォーラムの開催等により、国内外における本分野の理解増進に貢献しています。