1-9 汚染がれきの再生利用の安全性を評価する

−福島第一原子力発電所(1F)敷地内に限定した再生利用−

図1-22 再生利用についての考え方

拡大図(266kB)

図1-22 再生利用についての考え方

空間線量率の上昇を抑制するように再生利用を行い、敷地内で行われている放射線防護の運用にも影響を与えないことを確認します。

 

図1-23 道路材に再生利用した際のめやす濃度の妥当性確認の概念図

図1-23 道路材に再生利用した際のめやす濃度の妥当性確認の概念図

作業者への追加線量の確認に加え、敷地境界と海洋からどれだけ離隔をとれば運用基準を満たすか確認します。

 

図1-24 道路材からの距離ごとの空間線量

図1-24 道路材からの距離ごとの空間線量

敷地境界における線量率(最大値0.6 mSv/y)を考慮して1 mSv/y以下となるために必要な離隔を評価しました。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)敷地内には、大量の汚染がれき(コンクリート、金属、木材等)が保管されており、今後は燃料デブリで汚染された廃棄物の発生も考えられています。こうした汚染したがれきの処理・処分に向けた作業の中で、屋外に集積保管されている比較的核種濃度の低いがれきのうち、表面線量率が5 μSv/h以下のがれきを再生利用する方針が東京電力ホールディングスにより示されています。現在の1F敷地内は緊急時被ばく状況から移行した現存被ばく状況にあり、また全域が管理対象区域に設定されており、敷地に立ち入る人員は全て線量管理されています。こういった状況で再生利用可能な資源化物の放射能濃度を設定した例は国際的にもありません。

そこで、1F敷地内において、作業者への追加被ばく線量を抑制しつつ管理された状態での用途を限定した再生利用について初めて考え方を構築しました。図1-22に構築した考え方のフローを示します。再生利用を実施する際は、作業者への追加の被ばく線量を抑制するために、再生利用による敷地内の空間線量率を大きく上昇させない放射性セシウム(Cs)核種濃度(めやす濃度)で行うことを示しました。1F敷地全域におけるモニタリング値の最小値から、再生利用による空間線量率の上昇値を1 μSv/h以下とすることにしました。また、めやす濃度の妥当性を確認するために、再生利用を実施する現存被ばく状況下で実施されている放射線管理の運用に影響を与えないことを確認しました。1F内においては、①作業者の被ばく線量(廃炉作業を過度に制限しない追加線量として線量限度の10%を設定)、②敷地境界における評価線量(再生利用前の評価値も含めて1 mSv/y以下)、③海洋へ放出される地下水中核種濃度、について現在の運用を満たしているか確認しました(図1-23)。対象核種は、放射性Cs、がれき中に放射性Csに対して約1%存在するストロンチウム90(90Sr)、放射性Csとは相関無くクリアランスレベルを超えて存在する炭素14(14C)としました。

構築した考え方に沿って再生利用をした際のめやす濃度の試算と妥当性の確認を行いました。再生利用用途は、敷地内で実施可能性を考慮して道路材と建設用コンクリートを想定しました。両用途ともめやす濃度で再生利用した場合、①の条件を満たし、②と③についても敷地境界まで離隔をとれば条件を満たすことが確認できました(図1-24)。

本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「平成29年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃棄物の限定再利用に関する検討)事業」の成果の一部です。