7-3 MAサンプル照射試験データの不確かさ解析

−貴重なデータをより有効活用するために−

図7-8 反射体位置における、照射後<sup>241</sup>Amサンプルの242mAm対241Am原子数比の主要燃焼感度係数

図7-8 反射体位置における、照射後241Amサンプルの242mAm対241Am原子数比の主要燃焼感度係数

MA、ドシメータ、照射場の代表的な核種・反応の燃焼感度係数です。

 

表7-1 照射後MAサンプルの原子数比に係る不確かさ解析結果

照射前後の組成比測定値の不確かさ及びMAサンプルとドシメータと照射場に関連する解析(断面積データ)に起因する不確かさを表します。

表7-1 照射後MAサンプルの原子数比に係る不確かさ解析結果

 


廃棄物減容・有害度低減を目的として、1994年から1999年にかけて、高速実験炉「常陽」のMK-Ⅱ炉心において、アメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)等のマイナーアクチノイド(MA)のサンプルの照射試験が行われました。この試験は主に、MA核種の核データ、具体的には中性子入射核反応断面積データ(以下、断面積)の妥当性評価と精度向上のために行われました。

この試験で使用されたMAサンプルは数百μgと非常に微小なので、照射試験の解析にはサンプルが装荷された位置における正確な中性子照射量が必要です。ただし、炉心内の局所的な位置の中性子束を解析により精度良く求めることは困難です。また、長時間の照射が伴いますので、その履歴まで正確に把握する必要があります。そこで、断面積データが精度良く把握されているウラン235(235U)などのサンプルをドシメータとしてMAサンプルと同じ位置に装荷することにより、中性子照射量を精度良く測定することができます。

このように精度良く得られた測定結果がどの程度、MAの断面積データの妥当性評価や改善に有用かを判断するためには、不確かさの定量化が重要です。そのためには、断面積に対する燃焼感度係数(以下、感度)の解析が必要です。そこで、ドシメータを用いた場合でも適用可能な感度の定式化を行いました。

図7-8は、反射体位置におけるアメリシウム242m(242mAm)対アメリシウム241(241Am)(以下、242mAm対241Am)原子数比の主要燃焼感度係数を表します。242mAm対241Amを指標にすると、241Am捕獲断面積に正の大きな感度が表れます。また、ドシメータを構成する235Uの核分裂は負の感度を有しますが、これは、核分裂断面積が大きい側にシフトすると、中性子照射量がより小さめに評価されて、解析値が減少することを表します。さらに、反射体の主要構成核種である鉄56(56Fe)にも比較的大きな感度が見られます。

表7-1は、2種類の原子数比に係る不確かさの解析結果を表します。断面積起因の不確かさは、前述の感度と断面積の不確かさの積で求められます。炉心位置における242mAm対241Amとキュリウム245(245Cm)対キュリウム244(244Cm)は、解析値と測定値の差がほとんどなく、測定とMA以外の断面積に係る不確かさは十分に小さいので、非常に有用なデータと判断できます。それに対し、反射体位置における242mAm対241Amは測定の不確かさが大きく、MAの断面積の不確かさと同程度ですのであまり有用ではありません。一方、反射体位置における245Cm対244Cmの解析値は測定値に対して過大評価が見られます。また、測定の不確かさは十分に小さいのですが、MAの断面積の他に照射場に係る断面積起因の不確かさも大きいので、断面積データの改善には56Feに感度を有する他の炉物理データとの整合性を見る必要があります。そこで、断面積調整法と呼ばれる手法を適用しました。その結果、反射体位置の245Cm対244Cmの解析値の過大評価の大半は244Cm捕獲断面積データに原因がありましたが、56Feや235U等の断面積データにも原因があることが分かりました。このように、今回考案した感度の式が、断面積データの改良に重要な役割を果たすことが示されました。

本研究は、文部科学省からの受託事業として福井大学が実施した平成28年度「「もんじゅ」データを活用したマイナーアクチニド核変換の研究」の成果の一部です。