3-6 反応で明らかにする原子核の特異な形状

−クラスター構造の発現と成立度−

図3-13 クラスター構造の模式図

図3-13 クラスター構造の模式図

陽子()と中性子()二つずつから成るα粒子とコア核に空間的に分かれたクラスター構造の模式図です。コア核の安定性が強い場合や、α粒子とコア核に分離するのにちょうど良いエネルギーを持つときにクラスター構造の発現が期待されています。

 

図3-14 陽子(●)による原子核からのα粒子ノックアウト反応の模式図

図3-14 陽子()による原子核からのα粒子ノックアウト反応の模式図

 

図3-15 20Ne(p,pα)16O反応断面積

図3-15 20Ne(p,pα16O反応断面積

実験値(Carey, T. A. et al.)*と、20Neの基底状態にα+16Oクラスター状態が26%存在するとした場合の反応理論計算(実線)との比較を示します。

 


陽子と中性子(総称して核子)のたった2種類から成る原子核は、その単純な組成に反して多彩な様相を示すことが知られています。興味深い原子核の描像・構造として、クラスター構造があります。これは核子が二つまたはそれ以上の少数の塊に分かれ、単純な一つの球ではない特異な形状となった状態です。特にα粒子が安定で強く束縛することから、α粒子とコア核に分かれるαクラスター構造(図3-13)がその典型です。クラスター状態は主に軽い、整数個のα粒子と同じ陽子・中性子数を持つ原子核(8Be, 12C, 16O, 20Ne, 24Mg 等)でその存在が期待され、実験・理論の両面から実証的研究が行われています。

本研究では、散乱理論の立場からクラスター構造と散乱観測量との対応関係を明らかにし、散乱実験観測量との直接比較によってクラスター構造を調査するために、陽子を原子核に入射しα粒子を叩き出すノックアウト反応(図3-14)の理論研究を行いました。ノックアウト反応は比較的高い入射エネルギー(数百MeV)の陽子を原子核にぶつけることで、原子核からα粒子を叩き出す反応手法です。高い入射エネルギーによって、α粒子は束縛状態から散乱状態へ一段階過程で遷移するため、反応確率(断面積)とクラスター状態の存在確率が一対一対応し、その存在を散乱実験値から決定できるのが本手法の利点です。

α、16O原子核はともに特に安定な閉殻構造を持つため、20Neはα+16O クラスター構造が期待できる原子核です。20Neからのαノックアウト反応実験は1984年に測定され、当時の解析では20Ne基底状態中にα−16Oクラスター成分が約60%存在するという結果が報告されましたが、この数値は構造理論の予言に対して2〜3倍程度大きいという未解決の問題がありました。

核子の自由度に基づいた構造理論と、最新の相互作用等を用いた反応理論計算を行うことで、本研究では実験データと無矛盾にノックアウト反応断面積が再現できることが示されました(図3-15)。これは、αノックアウト反応理論で定量的に実験データを再現した最初の例であり、本手法がクラスター状態を定量的に調査可能であることを示した重要な成果です。

(吉田 数貴)

 

*Carey, T. A. et al., Alpha-Particle Spectroscopic Strengths Using the (p, pα) Reaction at 101.5 MeV, Physical Review C, vol.29, issue 4,1984,p.1273–1288.



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