図8-20 圧密非排水三軸圧縮試験結果の例
図8-21 標準圧密試験結果と再現解析結果の比較の例
放射性廃棄物の地層処分施設の構成材料の一つである緩衝材にはベントナイトと呼ばれる粘土が用いられます。ベントナイトは、塩分濃度等の地下水条件に応じて膨潤性等の力学特性が変化することが知られています。そのため、様々な塩分濃度条件での緩衝材の力学特性に関する試験データを取得し、塩分濃度に応じた力学特性を把握する必要があります。さらに、処分施設の設計等において、緩衝材の力学挙動を評価するためには、地下水条件に応じた「構成モデル」と呼ばれる力学の数理モデルを適切に選定し、そのパラメータ値を整備しておく必要があります。
本研究は、緩衝材の力学解析に用いる構成モデルとして、既存の弾塑性構成モデルが様々な塩分濃度条件で適用できるのかを示すことを目的としています。構成モデルには、様々な解析コードに適用され広く使用されている修正カムクレイモデルを用いました。このモデルが表現する主な力学挙動は、圧密や除荷による変形とせん断による変形です。これらの特性把握には標準圧密試験と間隙水圧測定を含めた圧密非排水三軸圧縮試験(以下、CU試験)が必要です。そこで、(1)様々な塩分濃度条件での標準圧密試験とCU試験のデータセットを整備する上で、データが不足している塩分濃度条件でのCU試験を実施し、蒸留水と塩水条件での緩衝材の力学特性の違いを分析しました。また、(2)修正カムクレイモデルを用いたこれらの試験の再現解析から、塩分濃度の異なる様々な塩水条件での適用性を検討しました。
その結果、(1)CU試験の結果には試験溶液条件による明確な違いはなく(図8-20)、蒸留水と塩水条件での力学特性の主な違いは標準圧密試験での除荷時の変形量の差にありました(図8-21)。さらに、(2)モデルのパラメータのうち、膨潤指数について塩分濃度に応じた値の設定が行えるように、当量イオン濃度(eq/L)との関係を整理しました。その値を用いた再現解析の結果、修正カムクレイモデルにより試験データをおおむね再現することができ、様々な塩分濃度条件に対して修正カムクレイモデルを適用できることが確認できました(図8-21)。
今後は、NaCl以外のイオン種の違いの影響等を検討するために試験データを拡充していくことで、処分事業の進展に伴いサイト条件等が具体化された際に対応可能な力学解析手法の整備に資すると考えています。
本研究は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業「平成30年度 高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(沿岸部処分システム高度化開発)」の成果の一部です。
(高山 裕介)