6-1 HTTRの新たな耐震重要度分類を策定する

−運転・試験で得られた知見を活用した合理的な耐震重要度分類−

表6-1 HTTRの耐震重要度分類(Sクラス)

高温ガス炉の特長を考慮して策定した耐震重要度分類(Sクラス)を示します。Sクラス施設は、停止機能(制御棒系)、閉じ込め機能の一部等となります。従来の耐震重要度分類と比べて、冷却系はSクラスからBクラスとなります。

表6-1HTTRの耐震重要度分類(Sクラス)

 

図6-2 新たな耐震重要度分類の妥当性確認の評価

図6-2 新たな耐震重要度分類の妥当性確認の評価

B、Cクラスの施設が機能喪失し、炉心を十分に冷却できない条件下での原子炉の冷却挙動を示します。燃料最高温度及び原子炉圧力容器最高温度は制限温度を超えることはなく、新たな耐震重要度分類の妥当性を確認しました。

 


原子炉施設では、設備の機能ごとに耐震重要度分類を定めて、耐震重要度分類に応じた地震力を用いて耐震評価を行います。耐震重要度分類はSクラス、Bクラス及びCクラスの3種類があり、各クラスの評価に用いる地震力の大きさは異なります。Sクラス、Bクラス及びCクラスの各設備は、それぞれ、一般産業施設等の3.0倍、1.5倍及び1.0倍の強度を保持できるように設計されます。高温工学試験研究炉(HTTR)の耐震評価に用いる地震動の加速度は、建設当時では350 Galでしたが、東日本大震災後では973 Galとなりました。今後、原子炉施設の評価に用いる地震動の加速度は、東日本大震災の経験を踏まえて増大する傾向にあります。そのため、耐震重要度分類は、必要以上に上位のクラスに分類してしまうと、過度に大きな地震力を用いて評価することとなり、耐震設計にかかる費用が増加します。

HTTRの耐震重要度分類は、1980年代後半の設計段階で策定されました。当時、高温ガス炉の安全上の特長を十分理解するための技術的知見及び運転実績の蓄積が不足していたため、実用発電用原子炉の耐震重要度分類を準用していました。しかしながら、その後に得られた運転実績及び試験結果から実用発電用原子炉の耐震重要度分類は必要以上に保守的な設定であることが分かってきました。そこで、HTTRで実施した運転・試験等の経験を活用し、新たに合理的な耐震重要度分類を策定しました。

安全要求の高いSクラス施設の耐震重要度に当たっては、地震起因の事故によってB、Cクラスの安全機能が喪失しても、Sクラス施設が機能すれば、事故が安全に収束すること及び一般公衆に過度の放射線被ばくを与えるおそれがないこと(実効線量5 mSv以下)に着目しました。Sクラス施設を表6-1に示します。新しい耐震重要度分類の妥当性を確認するために、B、Cクラスの施設が機能喪失し、炉心を十分に冷却できない条件下で評価を実施しました。評価の判断基準は、設計基準事故の判断基準を参考にし、核分裂生成物放散の障壁である原子炉圧力容器の温度が550 ℃以下であることとしました。評価結果を図6-2に示します。燃料最高温度は初期値から1114 ℃に低下した後、再び上昇しますが初期値を上回ることはなく許容設計限界温度1600 ℃に到達しませんでした。また、原子炉圧力容器の最高温度は制限温度550 ℃を超えることはありませんでした。また、被ばく評価の結果は、実効線量が約3.0 mSvとなりました。

評価の結果、新たな耐震重要度分類の妥当性を確認しました。また、原子力規制委員会は2020年6月に、耐震重要度分類の結果が設置許可基準規則に適合していることを確認しました。

(小野 正人)