図8-17 LV-1設置概略図
図8-18 除染試験結果
表8-1 装備による切断作業効率の比較
再処理特別研究棟は、1968年に使用済燃料を用いた再処理試験(PUREX法)を実施し、日本で初めてプルトニウムの回収に成功した施設であり、1996年から廃止措置として設備・機器の解体を実施しています。解体するにあたり、今後の廃止措置作業の効率化や作業工程の見積もりのため、作業管理、放射線管理、廃棄物管理等のデータを取得しています。本報告では、α線放出核種を含む核分裂生成物含有廃液を貯留していた大型槽(LV-1)(図8-17)の解体で得られた知見について述べます。
廃止措置を行う上で、解体作業前の除染は作業者の被ばく低減に非常に重要です。しかし、除染方法により効果は異なるので、有効な除染方法を検討するため、LV-1内底部(材質:SUS304L)を用いて遊離性汚染の除染試験を行いました。除染試験では初めに濡れウエスを用いた拭き取りによる簡易除染を行いました。その後LV-1底部を4分割し、それぞれ5%クエン酸、電解イオン水、オレンジオイル及びストリッパブルペイントを用いた除染を行い、その除染係数(除染前の放射能面密度を除染後の値で割ったもの)の比較を行いました(図8-18)。この結果、LV-1のようなα線放出核種が多く付着し、簡易除染では汚染除去が不十分な貯槽等については、ストリッパブルペイントを用いた除染が有効と分かりました。このデータは今後、類似設備の解体を行う際の除染方法の検討に非常に有用です。
次にLV-1本体の切断作業にて、防護装備による作業効率の違いを比較するため、作業者がエアラインスーツあるいは全面マスクを装備した場合の切断効率と切断時間を比較しました(表8-1)。LV-1本体はチップソーを用いて切断しました。切断時の空気中放射能濃度の上昇を防ぐため、LV-1内全体に塗料による汚染固定をした後に行いました。その結果、切断中の空気中放射能濃度が低いことを確認でき、装備を全面マスクに切り替えることが可能でした。これら2種類の装備着用時の作業データから1人・日当たりの平均切断長を比較すると、装備により1.8倍以上の差があることが分かりました。除染及び汚染固定後に切断した今回の作業にかかった人工数の合計は743人・日でした。一方、表8-1の結果を用いて、仮に除染及び汚染固定をせずにすべてエアラインスーツ装備で切断した場合の人工数を推定すると912人・日となりました。これらの評価から、除染及び汚染固定は、作業者の被ばく低減だけでなく、人工数の削減にも有効であることが分かりました。このように、今回の解体作業を通じて廃止措置の工程を検討する上で非常に重要なデータを取得できました。
今後の廃止措置作業においても、継続してデータを取得し、評価・解析を実施することで廃止措置の効率化に反映していきます。
(横塚 佑太)