10-1 研究施設等廃棄物の埋設処分に係る効率的な設計に向けて

−埋設施設から発生するスカイシャイン線量の評価−

図1 スカイシャインγ線のイメージ

拡大図(144kB)

図1 スカイシャインγ線のイメージ

トレンチ施設上部から発生する放射線は空気中で散乱されます。散乱により地上へ跳ね返ってきた放射線をスカイシャインγ線と呼びます。

 

図2 トレンチ施設から敷地境界までの距離

図2 トレンチ施設から敷地境界までの距離

概念設計では、トレンチ施設から敷地境界までの距離は120 m以上必要であるとされています。

 

図3 トレンチ施設からのスカイシャイン線量

図3 トレンチ施設からのスカイシャイン線量

トレンチ施設からのスカイシャイン線量を距離ごとに評価しています。最上段の中間覆土厚を厚くして評価した結果、スカイシャイン線量が低減することを確認しました。

 


埋設事業センターは、研究機関、大学、医療機関、民間企業等から発生する研究施設等廃棄物の埋設処分に係る事業を進めています。埋設施設を操業する際、埋設施設周辺の被ばく線量について原子力規制委員会が定めた基準線量を超えないことを評価する必要があります。その線量基準は、敷地境界でスカイシャインγ線等による実効線量が50 μSv/y以下と定められています。スカイシャインγ線のイメージを図1に示します。

原子力機構が実施した埋設施設の一般的な環境条件での基本的な設計として概念設計があります。概念設計では、極めて放射能濃度が低い研究施設等廃棄物を地表付近に埋設する施設(トレンチ施設)から、敷地境界までの距離を120 m以上とすることが示されています(図2)。一方、令和元年に埋設対象廃棄体の物量を調査した結果、概念設計時に比べて物量が増加したことから施設規模が変更となり、それに伴い、トレンチ施設の設計も変更しました。例えば廃棄体の積載段数が地下水位に接触しないように概念設計時は3段積みでしたが、設計変更後は4段積みとしています。積載段数が増えたことから地表面へより近い位置に廃棄体が定置するため、スカイシャイン線量の増加が見込まれます。そのため、概念設計ではトレンチ施設から敷地境界までの距離120 m以上で線量基準50 μSv/y以下を満たす結果でしたが、設計変更後もその基準を満たすのか評価を行いました。スカイシャイン線量が最も高くなるトレンチ施設を対象にした評価結果を図3に示します。

図3から、設計変更後(図3)も評価距離120 m地点で線量基準を満足する結果となりました。しかし、概念設計時(図3)と比べて裕度がなくなったため、トレンチ施設の最上段の廃棄体上部の中間覆土厚さを5 cm厚くして(図3)評価を行いました。その結果、覆土厚変更後(図3)の評価距離120 m地点のスカイシャイン線量が、覆土厚変更前(図3)と比べて3分の2に低減することを確認し、最上段の覆土を厚くすることで線量基準に対して裕度を確保できる結果となりました。

これらの結果から、立地場所における施設配置及び施設設計を検討する際は、敷地境界までの距離(120 m以上)及びスカイシャイン線量の評価結果の目安線量(50 μSv/y)に対する裕度を考慮し、最上段の覆土を厚くする等の設計検討を行うことが効率的だと考えられます。また、立地場所ではスカイシャイン線量の重畳を考慮した施設配置及び施設設計が必要であることが検討事項として挙げられます。今後も引き続き設計に関する検討を進めていきます。

(中村 美月)