原子力機構は、保有する原子力施設の安全強化とバックエンド対策の着実な実施により研究開発機能の維持・発展を目指すため、放射性廃棄物の処理・処分を含めたバックエンド対策に係る長期にわたる見通しと方針を示した「バックエンドロードマップ」(2018年12月26日策定)を取りまとめ、原子力施設89施設を対象に、「施設の集約化・重点化」及び「施設の安全確保」を「バックエンド対策」に加え「三位一体」で整合性のある総合的な計画として具体化した「施設中長期計画」(2017年4月1日策定、2022年4月1日改定)として取りまとめました。2018年3月28日には高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置計画、同年6月13日に東海再処理施設の廃止措置計画が、原子力規制委員会の認可を受けました。
また、新たな技術や知見を導入し、廃止措置及び廃棄物の処理処分のトータルでの安全性向上及びコスト削減を目指した技術の開発を推進し、その成果の現場への実装を進めるため、技術開発戦略ロードマップを作成しました。これに基づき、安全で効率的な施設解体プロセス、発生する放射性廃棄物の最小化や安定化などの処理プロセス、放射能確認を含めた処分プロセスに関連する技術開発を総合的に行っています(図1)。また、低レベル放射性廃棄物の埋設処分事業については原子力機構の業務に伴い発生したものに加え、大学、民間等の研究施設等からの発生分も処分事業の対象として取り組んでいるところです。
「もんじゅ」については、2022年10月に廃止措置第1段階における燃料体取出し作業を全て終了し、解体準備期間である第2段階に着手しました。また、「ふげん」については、原子炉建屋内の機器等の解体撤去として、大型機器を除く原子炉周辺設備(原子炉冷却系A、Bループ)の解体撤去作業を完工し、原子炉本体解体に向けて着実に進めています。
東海再処理施設については、施設のリスク低減に係る取組みとして、溶液状態で貯蔵している高放射性廃液をより安定な形にするためガラス固化処理を安全最優先で着実に進めつつ、ガラス固化技術の高度化に係る技術開発等に取り組んでいます。今年度は新型溶融炉を核燃料サイクル工学研究所のコールド試験施設に搬入・設置し、作動試験を行っています。今後、高放射性廃液の模擬廃液を用いた試験を行い、ガラス固化処理を安全・安定に行うためのデータを取得した後、新型溶融炉をガラス固化技術開発施設に設置する予定です。
本章では、近年の当該分野の技術開発成果として、低レベル放射性廃棄物(研究施設等廃棄物)の埋設施設の配置及び設計の検討に必要な施設からの線量の評価(トピックス10-1)、設備の解体・廃止措置に伴って発生する難燃性の物質を含む放射性有機液体廃棄物を燃焼処理する装置の安定運転に向けたメンテナンス技術の開発(トピックス10-2)、ジオポリマーの特性を活かして廃棄体の中に含まれる放射性元素や有害物質を閉じ込める固化材料の開発(トピックス10-3)及び、保有するプルトニウムの安全な長期保管に向けて、従来のポリ塩化ビニル(PVC)バッグではなく金属製の密封容器での貯蔵等の取組み(トピックス10-4)について紹介しています。