図1 PVCバッグの使用により腐食が起こったSUS製容器
図2 PVCバッグを用いない核燃料物質の貯蔵方法
プルトニウム燃料技術開発センターでは、主にウランとプルトニウム(Pu)の混合酸化物(MOX)を保有しています。プルトニウム燃料第一開発室(Pu-1)ではMOXの物性研究や照射試験用燃料の製造を、プルトニウム燃料第二開発室(Pu-2)及びプルトニウム燃料第三開発室(Pu-3)では実験炉等に供給するためのMOX燃料の製造をしてきました。Pu-1及びPu-2では核燃料物質をステンレス(SUS)製容器に収納し(図1(a))、それをポリ塩化ビニル(PVC)バッグで梱包した状態で貯蔵しています(図1(b))。PVCバッグは難燃性や取扱いやすさの利点から用いられてきましたが、機械的な衝撃で破れ、管理区域内の汚染事故につながった経験があります。また、PVCの劣化や後述するPVCの劣化に由来する塩素によるSUS製容器の腐食のため(図1(c))、PVCバッグ等の定期的な点検・交換等が必要です。
このため、PVCバッグを用いた貯蔵方法から脱却すべく、金属製の密封容器を用いた貯蔵方法や、燃料集合体の形態で貯蔵する方法に変更する取組みを進めています(図2)。金属製の密封容器を用いた貯蔵方法では、アルミニウム(Al)合金製の容器に核燃料物質を直接収納し、さらに、このAl合金製の容器を最大で4個、SUS製のキャニスタと呼ばれる密封容器に収納します。キャニスタは、最も新しい施設であるPu-3に集約し、貯蔵設備において一元管理して長期保管します。こうすることで、PVCバッグに起因する点検・交換を必要とせず、より安全で経済的な保管が可能となります。
また、一部の核燃料物質は水分や有機物を含んでいます。これらは放射線分解により水素ガスを発生し、密封容器の内圧上昇の原因となります。さらに、核燃料物質の中には、SUS製容器内で保管されていたにも関わらず塩素を含むものが見つかっています。これはPVCの放射線分解によって発生したと考えられ、時折観察されるSUS製容器の腐食もこの塩素によるものと考えられています(図1)。これらの不純物を除去するために、核燃料物質を熱処理し、不純物が除去されたことを確認して、キャニスタに収納しています。
このように、Puの安全な長期保管に向け、現在PVCフリーの貯蔵方法への移行を進めています。この活動で得られる知見はPu系のプラントや研究施設の操業にとって大変貴重なものです。現在行っている海外の研究所との情報交換を継続するとともに、技術開発成果としても積極的に発信していく計画です。
(廣岡 瞬)