図2-18 推定した大曲断層の3次元分布
高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、地下の高透水性ゾーンの位置や連続性などが、天然バリアの核種閉じ込め機能に大きな影響を及ぼします。地質学 的な高透水性ゾーンの代表例として複数の断層から構成される断層帯が挙げられます。天然バリアの機能を評価する上では、断層帯の位置・連続性や水理特性を 把握することが重要です。
断層帯の調査手法としては、地表割れ目調査を始めとして、リモートセンシングや空中物理探査、地上物理探査やボーリング調査などが挙げられ、その最適な調査体系(各調査手法の組み合わせ)は、調査地域の条件(地形・地質条件や社会的な制約)によって異なります。
そこで本研究では、幌延深地層研究所設置地区近辺でこれまで確認できなかった大曲断層の位置、連続性及び水理特性について、地表割れ目調査、反射法地震探査、AMT法電磁探査及びボーリング調査といった複数のアプローチから検討を試みました。その結果、「塩水系」と 「淡水系」の2種類の地下水が存在し、顕著な 岩相変化を示さない堆積岩においては、ボーリング調査や地震探査などに加えて電磁探査を組み合わせた調査が、断層帯の位置、連続性及び水理特性などを検討 する上で有効であることを例示することができました。隆起した海成の堆積物からなる地層は、海底堆積時に取り込んだ海水と隆起後に地表から浸透した淡水の 混合が地下浅部に起きるため、その地下水の塩濃度の違いによって地層の比抵抗値にコントラストが現れやすく、その比抵抗値を調べることによって淡水の浸透 領域が把握できます。また、顕著な岩相変化を示さない地層の場合には、淡水の浸透領域は断層帯などの2次的な構造とその水理特性に支配されます。すなわ ち、隆起した顕著な岩相変化を示さない海成の堆積岩からなる地層における地下浅部の比抵抗分布は、断層帯などの2次的な構造とその水理特性を反映している 可能性が高いと言え、本研究ではそれを裏付ける結果が得られました。