図4-30 レーザー加速の概念図
図4-31 発生電子ビームのプロファイル
図4-32 発生電子ビームのエネルギースペクトル
高強度レーザーにより生成されるプラズマ中の高電場 (ウェーク場)を用いて小型超短パルスの高品質電子ビーム源をつくることが可能となります(レーザー加速:図4-30)。本電子ビームは、高品質でパルス幅が短いため、次世代の加速器のための高品質電子ビーム源や構造変化の測定などへの実用化が考えられています。
パルス幅が70 fs(フェムト秒:フェムトは10−15)で3 TW (テラワット:テラは1012)の出力を持つレーザーを用いて、電子ビーム発生実験を行いました。図4-31に電子ビームのプロファイル、図4-32にエネルギースペクトルを示します。本実験により、広がり角 7.5mradと非常に指向性が良い、ピークエネルギー20 MeVの準単色エネルギーの電子ビームの発生に成功しました。電子ビームのエミッタンスは 0.4 πmm mradであり、1ショットあたりの電荷量は 0.8vpC(ピコクーロン:ピコは10−12)になります。本電子ビーム源は、現在の加速器に比べて小型 ・高品質であり、レーザー集光強度1018 W/cm2未満という低強度での準単色エネルギー電子ビーム生成は世界初となります。使用するプラズマの周期が数十フェムト秒と非常に短いため、10 fs程度のパルス幅の電子ビーム生成がされ、高速現象計測に応用できます。
応用のためには電子ビーム生成の安定化が今後の課題です。これを解決するために、理論解析とシミュレーションによる研究を行いました。1つのレーザーパルスでは、初期のパラメータ変動に対して、生成される電子ビームが敏感であり、安定な電子ビーム生成が難しく発生が不安定となります。そこで、2つのパルスをプラズマ中で正面衝突させる方式の高品質電子ビーム生成を提案しました。2パルス衝突により、生成の安定領域をつくることが可能となり、再 現性の良い高品質電子ビーム生成が可能であることを明らかにしました。
これらの研究は、レーザープラズマ相互作用による小型・高品質電子ビーム源を現実のものとし、電子ビーム応用研究へと進展をもたらす結果であります。