1-10 「もんじゅ」で発生を想定している熱過渡に対する余裕の評価

− 「もんじゅ」実データに基づくプラント熱過渡裕度評価−

図1-25 熱過渡裕度評価手法

図1-25 熱過渡裕度評価手法

 

図1-26 原子炉容器出口ノズル熱応力解析結果

図1-26 原子炉容器出口ノズル熱応力解析結果


「もんじゅ」では、安全・安定なプラント運用、更には安全で経済的な高速増殖炉を建設するための最適設計を行うために、運転を通して得られた実測データを用いて、設計評価を進めています。

「もんじゅ」は、炉心で熱せられた冷却材ナトリウムの温度が500℃以上の高温となることや、原子炉容器出入口ナトリウムが100℃以上の温度差を有することから、プラントトリップ時の厳しい熱過渡の影響を検討して、機器の健全性を確保しています。本評価では、電気出力40%からのプラントトリップ試験で得られた結果と設計時の解析結果(熱過渡条件)とを比較して設計余裕を評価しました(図1-25)。始めに「もんじゅ」実機の出力40%トリップ試験までに得られたデータで把握した実プラント特性を熱流動解析コードに組み込み、試験時解析から解析コードの解析精度を確認するとともに、試験時の機器内部の熱流動挙動の詳細を解析結果から把握しました。次に、同コードで出力100%のプラント状態からトリップ時の熱流動解析を行い、この結果を構造解析の入力条件とし、熱応力余裕を定量的に評価しました。

試験で得られたデータにおいて、原子炉容器出口ナトリウム温度は、予測より速い降下を示し、また、蒸発器給水入口温度は、予測より大きい上昇を示したため、要因を分析し熱流動解析コードの改良を行いました。

原子炉容器出口ナトリウム温度挙動を分析した結果、炉心上部から炉容器出口を通過する高温ナトリウムと低温ナトリウムの流況が影響していることが分かり、その領域の解析モデルを詳細化するなど整備が施され、これにより原子炉容器出口ナトリウム温度の試験結果を良く模擬できるようになりました。これを用いて、出力100%プラントトリップ時の原子炉容器出口ナトリウム温度を解析し、その温度挙動を境界条件として、原子炉容器出口ノズルの熱応力解析を実施した結果、設計時の評価結果に対して約50%の応力にとどまり、十分な余裕を有する結果が得られました(図1-26)。

更に、蒸発器給水管板部の熱過渡を評価するために、伝熱管内の水・蒸気の逆流の解析モデルを追加するなど詳細化し、より正確に蒸発器給水入口温度を把握できるようになりました。これを用いて、出力100%プラントトリップ時の熱流動解析を行い、その結果を用いて熱応力評価を実施したところ、給水管板の疲れ累積係数は非常に小さく、制限値1.0を十分に下回る結果が得られました。

今後、この検討で整備した熱流動解析コードや熱過渡裕度評価結果は、試運転時の運転計画などに反映していきます。また、本評価で得られた知見を踏まえて、着実に設計技術の高度化を進め、安全・安定なプラント運用やFBR実用炉の検討に反映していく予定です。


●参考文献
Mori, T. et al., Margin Analysis of MONJU Thermal Transient Base on Measured Plant Performance, Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE14), Miami, USA, 2006, ICONE14-89379, in CD-ROM.