3-7 ブランケット中のトリチウム生成率を高精度で測定

−増殖材中での測定及び計算手法の開発−

図3-18 多層構造ブランケットモックアップ核特性実験

図3-18 多層構造ブランケットモックアップ核特性実験

第一壁パネル(F82H及び水),6Liを40%に濃縮したLi2TiO3増殖ブロック,ベリリウムブロック,隔壁パネル(F82H及び水)から成る多層構造ブランケットモックアップを構築し、FNSの14MeV中性子源で照射して、Li2TiO3増殖材層中のトリチウム生成率を測定しました。

 

図3-19 トリチウム生成率分布測定結果

図3-19 トリチウム生成率分布測定結果

多層構造ブランケットモックアップのLi2TiO3材層内に、製作した直径13mm,厚さ0.5〜2mmの40%濃縮Li2CO3ペレットを挿入してトリチウム生成率測定用検出器として用いることで、詳細なトリチウム生成率分布の取得に世界で初めて成功しました。

核融合炉の核融合燃焼で消費したトリチウム量に対するブランケット中でリチウムと中性子の核反応で生成したトリチウム量の比をトリチウム増殖比(TBR)といいます。将来の核融合炉では、燃料であるトリチウムをその炉で調達することが求められており、TBRが1より大きいブランケットの開発が進められています。

ブランケットの設計では、モンテカルロ法等の数値計算を用いてTBRを推定していますが、複雑なブランケット形状に対する設計精度は、これまで十分に調べられていません。このため核融合中性子源施設(FNS)を用いて、核融合炉用ブランケットを部分的に模擬したモックアップ体系に14MeV中性子照射を行い、ブランケットのTBRの計算精度を実証する研究を行いました。

ブランケットには、厚さ12〜15mmの増殖材層中に直径1mmの濃縮トリチウム増殖材(Li2TiO3)微小球が充填されます。増殖材中のトリチウム生成率(リチウム原子1個あたり及び発生線源中性子1個あたりのトリチウム生成量)の分布は、その層中で1桁以上も変化すると考えられています。本研究では、このトリチウム生成率の急激な変化に対応するため、トリチウム生成率の変化に応じて厚さが異なる濃縮増殖材ペレット検出器と、微小球充てん層に充てん可能な非常に薄い増殖材微小球充てん層検出器の2種類のトリチウム生成率検出器を開発しました。

更にブランケットを模擬するために、耐熱構造材(F82H),冷却材(水),増殖材(濃縮Li2TiO3),中性子増倍材(ベリリウム)から成る平板体系多層構造ブランケット(図3-18)と、F82H,ベリリウム,増殖材微小球から成る微小球充てん層ブランケットの2種類のモックアップを製作するとともに、各モックアップの増殖材層には開発した濃縮増殖材ペレット検出器、微小球充てん層検出器を組み込み、14MeV中性子照射実験を行いました。この結果、ブランケットを模擬した体系において世界で初めてトリチウム生成率分布の詳細な測定に成功し(図3-19)、トリチウム生成率分布の正確な予測を可能にするデータベースを構築しました。

更に本実験結果に基づき、数値計算によるTBRの設計精度を調べました。特に、従来の微小球充てん層ブランケットの設計では、微小球充てん層を微小球とボイドで均質化したモデルで数値計算を行っていましたが、本研究では、微小球充てん層を六方最密充てん非均質モデルで仮定し、個々の微小球とボイドを正確にモデル化する手法を考案し、実験解析に適用しました。この結果、新たな計算手法を用いることでTBRを10%以内の精度で設計できる見通しを得、核融合炉のブランケット開発を大きく前進させました。