図14-7 乾式再処理主工程概要
図14-8 廃棄物の取扱フローチャート
乾式再処理(図14-7)は、硝酸などの水溶液を使った湿式再処理とは異なり、溶融塩(液体状の塩化物)を使用して電気化学的に元素を分離する技術であり、ウランや超ウラン元素を一括回収できることから核不拡散性に優れ、また工程が簡素であることから経済性の向上が期待されている先進的再処理技術の一つです。
乾式再処理の工程で発生する廃棄物には、有意な量のアクチニドが含まれることから、資源の有効利用と環境負荷低減のため、これらを回収し効率良く再利用する必要があります。電極の残渣や沈殿物のような固体廃棄物には、酸化物などの通常の工程(図14-7)では処理できない化学形態のアクチニドが含まれています。またプロセス管理のために行う化学分析からは、アクチニドを含む液体廃棄物が発生します。私たちは、これらの廃棄物からアクチニドを回収・再利用する方法を研究しています。
固体廃棄物に含まれるアクチニドを回収する方法として、工程中で処理することのできる塩化物形態への転換方法について実験を行いました。実験(未照射MOXペレット数10g規模)では、電解精製工程で使用している試薬と同じ混合溶融塩中に固体廃棄物と塩化物に転換するための試薬(塩化ジルコニウム)を投入して加熱しました。十分な反応時間(10時間程度)を確保することにより、ほぼ全量のアクチニドを塩化物として回収できることを確認しました。
液体廃棄物の処理方法としては、蒸発濃縮によりアクチニドなどの残渣と水に分離する方法について検討を行いました。しかし、乾式再処理で発生する液体廃棄物中には、腐食性の高い塩素イオンや有害物質であるカドミウムも含まれており、これらの物質を残渣と分離した水に移行させない工夫が必要です。私たちは、蒸発濃縮を行う前に硝酸銀や水酸化ナトリウムを用いて、あらかじめこれらの物質を沈殿させることで、水と残渣に分離することに成功しました。アクチニドを含む残渣は同様に、塩化物として再処理の工程へ戻すことができるため、回収率の向上が図れます。
私たちは、現在研究を進めている乾式再処理の主工程技術の完成と廃棄物処理などの周辺技術の開発(図14-8)を並行して進めており、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献できる次世代原子炉の燃料再処理方法の確立を目指しています。本研究は、財団法人電力中央研究所との共同研究として「高レベル放射性物質研究施設(CPF)」で行っています。