14-6 光ファイバで高温・高放射線下の機器の変位や振動を測定する

−高速炉プラントの構造健全性監視技術の開発−

図14-11 「常陽」の1次冷却系と光ファイバを用いた変位・振動測定のための装置

図14-11 「常陽」の1次冷却系と光ファイバを用いた変位・振動測定のための装置

光ファイバに接続した複数のFBGを配管サポートに設置しました。SLD光源から光ファイバへ広帯域光を入射し、FBGによって反射される光の波長をスペクトラムアナライザで測定します。これにより、配管サポートの熱膨張による変位や主循環ポンプの運転に伴う振動を測定します。

 

図14-12 FBGによる配管サポートの変位測定結果

図14-12 FBGによる配管サポートの変位測定結果

原子炉出力に追随して変化する変位量を測定しました。

 

図14-13 FBGによる配管サポートの振動測定結果

図14-13 FBGによる配管サポートの振動測定結果

主循環ポンプの運転状態によって変化する振動を測定しました。

ナトリウム冷却型高速炉では、高温のナトリウム(500℃以上)が循環する1次冷却系配管が全長100m以上にわたり敷設され、その周辺に循環ポンプや多数の配管支持装置が設置されています。このように広範囲に設置された構造物が健全に機能していることを監視するには、高温・高放射線環境下の機器の変位や振動をいかに効率的かつ高精度に測定するかが課題となります。これを解決する方法として、光ファイバブラッググレーティング(FBG)を用い、高速実験炉「常陽」の1次冷却系配管の変位及び振動の測定を実施しました(図14-11)。

FBGは特定波長の光を反射する光ファイバで、温度変化や変位を受けるとその反射波長が変化します。FBGは1本の光ファイバ上に多数配置できるので、計装設備の簡素化を図る上で有効です。

変位測定では、スペクトラムアナライザを用いてFBGの反射波長の変化量を測定してファイバが設置された部位の変位量を求めますが、FBG自身の温度変化でも波長が変化するので、これが誤差になります。そこで、両端を固定したFBGの波長変化量から、温度変化のみを検知するよう片端のみ固定したFBGの波長変化量を差し引くことでFBGの温度による変位分を補正しました。測定により得られた配管サポートの変位量は、図14-12に示すように、原子炉運転・停止に追随して変化し、当該箇所の温度変化幅に線膨張係数を乗じて計算した熱変位量と良く一致しました。この結果から、配管サポートの熱変位が正確に測定されたことを確認できました。

また、振動は、ファイバが設置された部位が高速で変位する現象として、反射波長の時間変化から計測することができます。しかし、スペクトラムアナライザは秒オーダの測定時間を要するので、それより高速の振動をとらえることができません。そこで、変位によって生じる反射波長の変化を、光フィルタを透過する特定波長成分の光量の増減として捕らえ、これをフォトダイオードで電気信号に変換することにより、変位量に応じた大きさを有する電圧の時間変化を高速で計測でき、振動測定を可能にしました。図14-13に示すように、主循環ポンプの入口配管のサポートに設置したFBGからの信号は、ポンプの停止時に比べて運転時に大きくゆらぎ、ポンプの運転に起因する振動が測定されたことを確認できました。

これらの測定を原子炉運転日数で約120日に及ぶ長期間にわたり実施し、γ線の照射線量は4×104Gyに達しましたが、放射線による光ファイバの劣化も見られず、変位や振動を測定することができました。これらの結果から、高速炉の構造健全性の監視に光ファイバが適用できることを実証しました。